弁護士法人ブレインハート法律事務所

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パーソナルロイヤー・顧問弁護士

パーソナルロイヤー

パーソナルロイヤーとはなんですか?

パーソナルロイヤーは個人のための顧問弁護士です。パーソナルロイヤーのご契約をいただいたお客様には、ご相談の都度費用をご負担いただくことなく、随時、ラインのトーク等を利用してどんな内容でもお気軽にご相談いただけます。

パーソナルロイヤーを利用するメリットはなんでしょうか?

パーソナルロイヤーは、あなたがスムーズでストレスフリーな人生を送るためのお手伝いをします。トラブルや争いごとが発生した後にご相談いただくのではなく、日常生活の中で様々な不安、疑問、心配、問題等が生じたときに、その都度、そのような不安等をそのままお伝えいただき、これに対して有効、適切なアドバイス等を行うのがパーソナルロイヤーの一番の役割です。例えば、「最近、こんなメールが来るんだけど対応しなくて大丈夫かな。」「職場の上司が〇〇してと言われたけど従わなければいけないのかな。」「最近、テレビやネット等で〇〇のようなことが言われているけど、私も〇〇について真剣に検討した方がいいかな。」「役所の人から〇〇〇の手続をしてくださいと言われたけど、不親切だし、自分は詳しくないから不安だけど、誰か間違いのないやり方をきちんと教えてくれないかな。」「友達から、新しくて面白いビジネス(あるいは投資など)があるから、あなたも一緒にやろうと言われたけど、本当に信じて大丈夫かな。」「最近仲良くなった男性から交際を申し込まれたけど、その人のことで〇〇の点がちょっと心配だな。安易につきあってしまっても大丈夫かな。」「将来、親に万一のことがあったとき、自分の兄弟姉妹の仲を考えると〇〇や〇〇の点で不安があるけど、誰に相談していいかわからない。親せきとかだと利害関係があるから相談しにくいな。」「部下の勤務態度や能力に不満を感じているので、○○のような指示・命令をしたいが大丈夫かな。」「取引先(あるいは競合他社)の動向が気になる。相手が何を考えているかを把握するために、色々な企業を見てきた人にアドバイスしてもらえないかな。」などといったご相談に対して、あなたの継続的なパートナー(パーソナルロイヤー)として、適時適切なアドバイス等を行います。そのような意味で、パーソナルロイヤーは、あなたのライフナビゲーターであり、メンターであり、人生応援弁護士でもあります。その時々のあなたのニーズに合わせて、親、兄弟、親友、先輩、上司、異性、コンシェルジュ、参謀など、あなたと本当に親しい関係になったつもりで真剣にアドバイスすることによって、あなたの人生を力強くサポートし、ナビゲートします。

事件解決を担当するのが弁護士の仕事だと思っていましたが、なぜトラブル等が起こる前に相談すると良いのですか?

離婚・男女関係事件、仕事や職場でのトラブル、売買・賃貸借・請負・業務委託等の各種契約の問題、交通事故や刑事事件、相続・遺言や親族関係の問題など、人々の間で日々生ずる様々なトラブル等について、その解決のためのお手伝いを多数担当してきた弁護士が、結末まで見てきた経験をいかして、むしろトラブル等が発生する前に、あなたを力強くサポートすることに重要な意義があるからです。仕事や生活、人間関係がスムーズでストレスフリーなものとなる方法、トラブル等の発生を未然に防ぐ方法、あるいは仮に起こってしまっても被害を最小限にとどめる方法などを継続的にアドバイスいたします。

パーソナルロイヤーの弁護士と、どのような方法で相談することができますか?

パーソナルロイヤーのご契約コースをいくつか準備しております。コースによって、来所相談、オンライン相談、電話相談、訪問相談が含まれるコースもございます。ご自身に合ったコースをお選びください。

企業・法人・団体の顧問弁護士

当社は、自動車の修理・整備業を営んでおりますが、これまでの仕事のやり方は、注文主から依頼があると、修理等が必要な箇所をチェックして見積書を作成し、その見積書どおりでよいとなれば、特に契約書というタイトルの書面は作らず、車両のナンバーや修理作業の名称等を記載した簡単な内容を記載した注文書を、手渡しでもらうか、ファックス等で送ってもらえばそれで受注となり、仕事を始めます。途中で、工事内容の変更希望等があった場合は、電話や口頭で聞き取り、これらの変更も反映したうえで仕事を完了しますが、この変更については、改めて見積書を作る場合もありますが、口頭で追加料金が発生することを伝えるだけで、そのまま工事を進めてしまうことも多くあります。 そして、仕事完了後に、注文主に対して、変更部分も反映させた請求書を出して代金を回収するのですが、時折、お客様の中には「追加工事はサービスで、無料だと思っていた。追加分の見積書ももらっていない。」とか、「見積書は見たが、見積書どおりの金額を払うとは言っていない。見積書どおりでよいと認めた契約書も作っていない。本当は、見積書の修理内容より安くて良い方法があったはずだ。それをやらなかったのはお宅の責任だから、安くて良い他のやり方でかかる費用分しか支払わない。注文書にも、見積書と全く同じ工事をやってほしいとか、見積書どおりの代金を払うといった記載はないはずだ。」とかいうような主張をして追加分の支払いを拒む方や、修理を完了してお客様に車両を引き渡し後、1か月以上も経ってからやってきて「ここの傷の修理も頼んだはずなのに直っていないじゃないか。無料で直してくれ。」などと言って、修理後に新たに付いたと思われる自損事故の傷の修理を無料で要求する方もいらっしゃいます。 このような事態が生じた際、当社としては、当然、お客様の要求について納得できるはずもないのですが、このような件でもめると当社の評判が落ちてしまうのではないか、あるいは、お客様と法的に争うと高額の弁護士費用がかかるのではないか、などと考えてしまい、結局、お客様の要求に応じてしまうことがあります。 しかし、いつまでもこのようなやり方を続けていくことには疑問や不安を感じており、何か良い方法がないか質問させていただきます。

ご質問のケースでは、予め弁護士に相談・依頼して契約書の書式(例えば、見積書と同内容の修理を正式に依頼する旨の文言、見積書の金額と同内容の金額を払う旨及び追加・変更等が生じた場合には新たな見積書に基づく代金額を異議なく支払う旨の文言、修理完了後に速やかに確認をして車両を受け取った後は修理未了等を理由とする無料修理の依頼はできないものとする文言等を入れたもの)を作成し、契約時には必ずこれを使用することとし、さらに、見積書その他の適当な書面に相手方の署名欄を設けて、都度必ず相手方から承認のサインをもらうようにするなどの備えをすれば、問題の多くを未然に防ぐことができます。

我が国では、事件が発生したり、損害が生じたり、裁判を起こされたりした後に、初めて弁護士に相談に行かれる企業がこれまでは多かったように思われますが、問題を放置したために甚大な被害が生ずるおそれのある状態に至った後に初めて弁護士に依頼するよりも、早い段階から顧問弁護士を確保し、被害が発生していない段階、あるいはわずかな被害にとどまる段階から気軽に顧問弁護士に相談できる体制を整えておいた方が、被害自体を未然に防いだり、被害を最小限に食い止めたりすることができるだけでなく、費用の面でも結果的にリーズナブルなものとなることが少なくないと思われます。このような法務面の備えは、予防法務と言われており、近時は、予防医学と同様に、その重要性が認識されるようになってきました。「何かあったら弁護士に頼む。」ではなく、「何も起きないように弁護士に相談する。」という考え方が、企業の予防法務という観点からは極めて重要であるといえます。

また、ご質問の注文主が普通の方ならまだ良いのですが、仮に、暴力団等の反社会的勢力や不当なクレーマー等であった場合には、さらに対応に苦労することとなります。これら反社会的勢力や不当なクレーマー等から企業を守り、その他の面でも法的な備えを万全にして企業を防衛するという意味でも、顧問弁護士の存在は重要です。

くわえて、顧問弁護士を確保することで、取引先や交渉相手等から、法務面に関する意識の高い企業であると評価され、取引や交渉等において一目置かれる存在となり得るという効果も期待できます。

より大きな観点からみても、現代の企業活動においては、法令を遵守し、社会に貢献しながら利益を上げていくという姿勢が強く求められています。それゆえ、コンプライアンス(法令遵守。企業倫理という意味で使用されることもあります。)は、今や企業活動にとって必要不可欠の大前提ともいえます。同様に、企業における内部統制(ガバナンス)の重要性も強く意識されるようになってきており、企業の社会的責任(CSR)について語られる機会も増えてきています。

これらの理由から、弁護士と顧問契約を結んで、顧問弁護士を確保することをお勧めいたします。

離婚・男女問題

離婚

各種離婚手続の内容や違いについて教えてください。

協議離婚とは、夫婦が話し合いによって離婚するというものです。お互いの合意があれば、理由を問わず離婚することができます。

調停離婚とは、家庭裁判所の調停によって離婚するというものです。調停とは、裁判所において、調停委員会(裁判官及び調停委員)が当事者の間に入って調整を図り、当事者間の合意を成立させる制度です。調停委員会が間に入ることで、円滑な話し合いが期待でき、不当な内容の離婚を防ぐことが期待できますが、最終的には夫婦互いの合意が必要となります。

審判離婚とは、調停が成立しない場合に、調停申立の趣旨に反しない限度で、家事審判官(裁判官)の審判によって離婚するというものです。しかし、審判から2週間以内に異議を申し立てると効力を失うので、現実にはほとんど利用されていません。

裁判離婚とは、家庭裁判所の判決によって離婚するというものです。判決によって、夫婦互いの合意が無くとも離婚が成立しますが、離婚の訴えの提起は、調停が不成立ないしこれに準ずる取下げの場合に限り認められること、民法770条1項各号の離婚理由がなければ離婚が認められないこと等に注意が必要です。

和解離婚とは、訴訟(裁判)の中で、夫婦が互いに自らの主張を譲り合って合意を形成して離婚するというものです。離婚の訴えを提起した場合、和解離婚となるケースが多くあります。

親権

私は、現在、妻と離婚の話し合いをしていますが、5歳の子どもがおり、その親権についてお互いに譲りません。妻が、話し合いの中で、「子どもが小さいのだから、親権者には母親がなるのが当然である。」と言っています。もし、調停や裁判などで親権が争われた場合、やはり母親である妻が親権者と定められてしまうのでしょうか。

子どもの親権者を定める際には、個々の事案ごとに、父母の事情(経済力や居住環境、監護補助者による援助の有無、監護の継続性、子どもとの心理的な繋がりの程度など)や子どもの事情(子どもの環境、交遊関係、学校関係、子どもの意思など)を考慮して、父母のどちらを親権者と定めるのが子どもの健全な生育に適するかという観点から判断されます。したがいまして、必ずしも母親が親権者と定められるわけではありません。

私は、私の不倫が原因で夫と夫婦仲が悪くなったため、離婚を考えています。私には3歳の子どもがおり、子どもの親権者には私がなりたいと考えています。親権者を決めるに当たって、不倫をしていたという事実は不利になるのでしょうか。

不倫(不貞行為)は、夫婦関係を破綻させた原因ではありますが、そのことをもって直ちに親権者として不適格であるということではありません。あくまで子どもにとって父母のどちらを親権者と定めるのが子どもの健全な成長に適するかという観点から判断されます。

私は、妻と離婚し、親権者となった妻が子どもを連れて実家に戻りました。せめて月1回は子どもと会いたいのですが、妻は子どもに会わせてくれません。子どもと会うためにはどうすればよいでしょうか。

親権者でない親が子どもと会うことを面会交流(以前は面接交渉と呼ばれていました。)といいます。面会交流は、その性質については諸説ありますが、一般には、親権者でない親の権利として認められ、調停や審判の対象となります。面会交流は、明らかに子どもの健全な成長を妨げるおそれがない限り、認められるべきであると考えられています。したがいまして、親権者である親が子どもと会わせてくれない場合には、調停や審判を申し立て、面会交流の実現を図るべきです。

私は、夫と離婚し、私が6歳になる子どもの親権者になりました。しかし、夫は、子どもと会ったときに、子どもを連れ去ってしまい、子どもを返してくれません。すぐに子どもを返してほしいと思っていますが、どういう方法があるのでしょうか。

親権者は、子どもの監護教育権を持っており、子どもを虐待しているなど特別な事情がない限り、監護教育権を根拠として、子どもの引渡しを求めることができます。手続としては、調停及び審判があります。また、審判前の保全処分によって、審判がなされる前に、仮に子どもの引渡しが認められる場合もあります。

財産分与

私は、結婚後、専業主婦をしていましたが、夫との関係が悪くなったので、現在、夫と離婚について話し合いをしています。離婚後の生活を考え、結婚後に蓄えた貯蓄について財産分与を求めていますが、夫から「貯蓄は全部俺が稼いだお金だ。お前はずっと専業主婦だったから分与するとしても1割か2割だ。」と言われました。私としては、家事をして夫を支えていたつもりであるので、貯蓄の2分の1は分与してもらいたいと思っています。夫婦共働きの場合と妻が専業主婦の場合とで、財産分与の割合は異なるのでしょうか。

清算的財産分与における清算割合については、明確な基準はなく、夫婦それぞれの共同財産の形成・維持に対する貢献の程度によって判断されます。もっとも、現在の実務においては、特別な事情がない限り、夫婦共働きの場合か妻が専業主婦の場合かを問わず、清算割合は2分の1とされます。

私は、現在55歳の専業主婦であり、59歳の夫との離婚を考えています。年金を受給するまでの間、生活に不安があるので、離婚に際して、夫に対して財産分与を求めたいと考えています。しかし、私たち夫婦には特に財産はないので、夫が来年定年退職する際に支給される退職金の半分を分与してほしいと考えています。退職金は、財産分与の対象となるのでしょうか。

退職金は、賃金の後払い的な性格が強いので、実質的な婚姻期間(同居期間)に相応する部分は、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産であるといえます。したがいまして、既に支払われた退職金のうち、実質的な婚姻期間に相応する部分は、財産分与の対象となります。

しかし、将来支払われる退職金については、退職時期や会社及び本人の事情、経済情勢などに左右されるので、必ずしも財産分与の対象となるわけではありません。もっとも、退職時期が近いなど、退職金が支給されることがほぼ確実な場合には、財産分与の対象と認められる場合が多いといえます。金額や支払方法については、離婚時点で退職すれば支給されるであろう金額を基準として離婚時に支払う、将来支給されたときに支払うなどの方法が考えられます。

私は、妻から300万円の預金について財産分与を求められています。しかし、住宅ローンの残額が1500万円で(住宅の名義は、私名義です。)、しかも住宅の評価額は800万円なので、いわゆるオーバーローン状態です。このような場合にも、財産分与請求権はあるのでしょうか。

夫婦共同財産に資産(積極財産)と債務(消極財産)とがある場合には、原則として、積極財産の総額から消極財産の総額を差し引いた残額が財産分与の対象となります。ご質問のケースですと、積極財産が1100万円、消極財産が1500万円と消極財産の額が上回っているので、原則として、財産分与の請求権は生じません。

ただし、実際の調停などの場では、住宅ローンが残っていても、住宅ローンの負担をどうするか等を考慮しつつ、財産分与が認められる場合もあります。

慰謝料

私は、夫が不倫をしたので、離婚をし、慰謝料を請求したいと考えています。慰謝料の金額はどのようにして決められるのでしょうか。

慰謝料の金額は、相手方の行為の有責性、婚姻期間、相手方の資力などを考慮して決められます。明確な基準といえるものはなく、個々の事案ごとに判断されることとなります。

私は、妻の不倫を理由に離婚調停をしましたが、不成立に終わりました。そこで、離婚訴訟を起こすとともに不倫の相手の男性にも慰謝料を請求する訴えを起こしたいと考えていますが、離婚訴訟とは全く別の訴訟として扱われるのでしょうか。

離婚請求と離婚の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求は一つの訴えですることができます。したがいまして、家庭裁判所に離婚訴訟を提起する際に、併せて不貞行為の相手方に対する損害賠償請求訴訟を提起することができます。

年金分割

私は、結婚後ずっと専業主婦をしていましたが、夫との離婚を考えています。夫婦間には特に財産もないので、老後が不安なのですが、離婚時年金分割制度というものがあると聞きました。離婚時年金分割制度とはどのようなものなのか教えてください。

離婚時年金分割制度とは、配偶者の厚生年金及び共済年金について保険料納付実績を分割し、分割を受けた第3号被保険者(第3号被保険者=厚生年金、共済年金の加入者の被扶養配偶者で、20歳以上60歳未満の者)に対し、分割後の保険料納付実績に基づいて算定された額の年金受給権が発生するという制度です。

種類としては、合意分割と3号分割の2種類があります。合意分割は、夫と妻が、年金を分割することとその分割割合について合意していれば、離婚時に、婚姻期間の保険料納付実績を合意によって定められた割合(最大50パーセント)で分割できるというものです。夫婦間の協議で合意が成立しない場合は、調停、審判によって按分割合を決めることとなります。

3号分割とは、夫婦の一方が、平成20年4月以降に、第3号被保険者であった期間がある場合に、厚生労働大臣等に対して請求することで、その期間(平成20年4月1日以降の部分に限られます。)の保険料納付実績の2分の1を当然に分割する制度です。

養育料

私は、夫と離婚協議中であり、子どもの親権者には私がなり、私が子どもを引き取ることで合意しましたが、養育料の額で折り合いがつきません。適正な養育料の額を知りたいのですが、養育料はどのようにして決められるのでしょうか。

養育料の支払義務は、子どもに対し、自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務であり、父母双方の収入を基準に決められます。現在の調停・審判においては養育料算定のための表が活用されており、この算定表を目安に養育料を決めるケースが多いといえます。

現在、子どもが17歳の高校2年生であり、大学進学を希望しております。そこで、養育料を子どもの大学卒業まで支払ってほしいと考えておりますが、認められるのでしょうか。

養育料の支払いは、子どもが20歳になる日の属する月までとすることが一般的です。もっとも、父母双方の合意により、子どもが大学を卒業する月までとすることは可能です。問題は、話し合いで合意が成立せず、審判になった場合ですが、父母の経歴、経済状態や本人の学校成績、学校の進学実績などを考慮して、大学進学の可能性が相当程度高いといえる場合には、養育料の支払いは子どもが大学を卒業する月までと認められる可能性があります。

私は、妻と離婚後、子どもの養育料として毎月5万円を支払っていました。しかし、勤めていた会社が倒産してしまい、何とか再就職先を見つけましたが、給与は以前の半分以下になってしまいました。現状では毎月5万円の養育料の支払いでは生活ができない状況ですが、養育料を減額することはできるのでしょうか。

養育料の支払いは長期にわたるので、いったん養育料を定めたとしても、その後の経済情勢や支払義務者の事情の変化によって定められた額が実情に合わなくなることがあります。この場合には、養育料の増額、減額を求めることができます。ご質問のケースであれば、勤務先の倒産による転職で収入が激減したという事情の変化がありますので、減額についての協議、調停、審判をすることをお勧めします。

婚姻費用分担

私は、2年前に夫と別居しました。別居の際、夫から生活費として毎月3万円を受け取るという合意をしましたが、3か月前に勤務先を整理解雇されてしまい、なんとか新しい勤務先に就職できたものの、収入が以前より激減してしまいました。夫に対して生活費を増額するよう求めることを考えておりますが、一度決めた生活費の額を変更することは可能なのでしょうか。

いったん婚姻費用分担額(生活費)を定めたとしても、その後の経済情勢や支払権利者または支払義務者の事情の変化によって定められた額が実情に合わなくなることがあります。この場合には、婚姻費用の増額または減額を求めることができます。ご質問のケースですと、勤務先の解雇による転職で収入が激減したという事情の変化がありますので、夫との協議や調停または審判の申立てをすることで婚姻費用分担額の増額が認められる可能性があります。

私は、夫と別居して3年が経ちます。別居中、夫から全く生活費を受け取っていないので、婚姻費用分担の調停を申し立てようと考えています。調停においては、どの時点からどの時点までの婚姻費用の請求をすることができるのでしょうか。

調停においては、申立時を婚姻費用(生活費)支払いの始期とすることが通常ですので、原則として、申立時から離婚時または別居関係の解消時までの婚姻費用を請求することができます(なお、次のQ及び、その次のQを参照)。

私は、1年前に子どもを連れて夫と別居しました。夫との間で別居時に毎月7万円の生活費を支払ってもらう約束をしましたが、これまで一切生活費を受け取っていません。しかし、自分1人の収入では生活が苦しいので、夫に対し、別居してからの分も含めて生活費を請求したいと考えていますが、可能でしょうか。なお、離婚は考えていません。

別居開始時から請求時までの婚姻費用の未払い分(過去の婚姻費用の未払い分)は、相手方との間で合意が成立し、これを証明することができれば、請求は可能です。

私は、夫と2年前に別居していますが、関係の修復は不可能なので、離婚を決意しました。別居中、夫から生活費を全く受け取っていなかったので、夫に対し、未払いの生活費の支払いを求めたいと思いますが、可能でしょうか。

過去の婚姻費用の未払い分は、財産分与の際に考慮される事情となりますので、財産分与として、過去の婚姻費用相当額の分与が認められる場合があります。

私は、4年前に男性と浮気をして、子どもを連れて夫と別居しました。しかし、2年前に浮気相手の男性と別れてしまい、現在は、アルバイトで収入も少ない状況です。他方、夫は、私と別居後、事業に成功し、かなりの収入があるようです。子どものことを考え、夫に対し生活費の請求をしたいと考えていますが、別居の原因を作った私が生活費の請求をすることが出来るのでしょうか。

夫婦間に子がいる場合、婚姻費用(生活費)のなかには、子の養育料も含まれます。両親は、子に対し自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務がありますし、そもそも子が夫婦間の別居に対する責任を負うことはないので、婚姻費用のうち、子の養育料相当分については、別居の原因が自分にあるとしても請求が認められると考えられます。

他方、配偶者自身の生活費については、婚姻費用の分担は夫婦の同居協力扶助義務(民法752条)と表裏一体の関係といえるので、不貞行為などがあり同居協力扶助義務に著しく反していることが明らかである(別居の原因につき一方的に責任があることが明らかである)場合には、婚姻費用のうち配偶者生活費分について、通常よりも減額されることが考えられます。他方、同居協力扶助義務に著しく反していることが明らかとまでいえない場合(別居の原因につき一方的に責任があることが明らかとまではいえない場合)には、通常の場合と同様の額の分担請求が認められると考えられます。

DV

私は、夫からの度重なる暴力に耐えかねています。夫から逃れて生活したいと考えていますが、具体的にどうすればよいのでしょうか。

まずは、配偶者暴力相談支援センター(地域によって名称は異なります。)や警察署に相談すべきです。配偶者暴力相談支援センターでは、自立支援やシェルターの利用などの情報提供や一時保護等の援助を、警察署では、緊急性の高い場合には、一時保護などの措置をとってもらうことなどができます。そのうえで、DV加害者から避難をするのがよいでしょう。

また、DV加害者から被害者を保護する手段として、いわゆるDV防止法に基づく保護命令の申立てがあります。保護命令には、被害者本人への接近禁止、被害者への電話等禁止、被害者の同居の子への接近禁止、被害者の親族等への接近禁止、退去命令の5つがあります。保護命令に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑罰に処せられます。

私は、夫のDVから避けるために別居しました。夫とは一刻も早く離婚をしたいのですが、どのように離婚手続を進めていけばよいのでしょうか。

協議離婚が成立する見通しがないので、調停申立てまたは訴訟提起によって離婚手続を進めていくことになります。もっとも、調停申立てや訴訟提起により、DV加害者からの暴力などがひどくなる傾向があるので、代理人弁護士に依頼しなければ手続を進めていくことは極めて困難であるといえます。代理人弁護士に依頼した場合には、DV加害者との連絡は代理人弁護士が行いますし、裁判所との折衝により、調停や裁判の期日においてDV加害者と直接接触しないよう配慮することが可能になります。

相続

遺産分割

私の父は、現在、病気療養中ですが、先日、医師から余命三か月と宣告されました。私の母親は三年前に亡くなっており、兄弟は、私、妹、弟の三人です。 元々、兄弟仲は悪くなかったのですが、最近になり、父と同居している弟夫婦が、父の預金や不動産に関して、姉二人に内緒でこそこそと動いており、態度も何となくよそよそしい感じがします。 私自身、あまり父の財産にこだわるつもりはないのですが、常々、父から、弟夫婦に「冷たくされている。」と聞かされていたので、父に万一の事があったときに、弟夫婦が父の財産について理不尽なことを言い出すようなことがあれば、私も黙ってはいられません。 そこで、父亡き後の遺産の分割に関して、今後どのように考えていったらよいか、アドバイスしてください。

あなたには、法律で3分の1の法定相続分が認められていますので、お父様に万一の事があったときは、他の相続人に対して、法定相続分に従った遺産の分割を求めることができます。

遺産分割に関する話し合いのことを、遺産分割協議といいます。

この協議が調わないときは、家庭裁判所に対して遺産分割の調停又は審判を求めることができます。調停は、裁判所で行う話し合いの手続ですが、当事者の間に調停委員が入って調整してくれるため、本人同士の直接の話し合いよりもスムーズに進むことが期待できます。また、話し合いでは容易に解決しないような場合は、裁判所の審判官が諸般の事情を総合考慮して遺産分割の審判をします。

こうした手続を利用すれば、問題の解決に向かって着実に進んでいくと思われますので、是非、弁護士にご相談ください。

相続放棄

長い間、遠方で暮らしていた弟が、半年前に死亡しました。弟には妻も子もなく、両親は既に他界しており、私と弟は二人兄弟でした。弟の葬儀は、身内だけで簡単に済ませました。 弟は、特に財産と呼べるようなものは何もなく、弟の相続について考えることもないまま、半年が過ぎたのですが、昨日、私は、ある銀行から、弟の借金を債務として相続したとの理由で、突然、300万円の支払いを求められました。 私の月収は、10万円程度であり、貸家で一人暮らしをしていることから、300万円の支払いは容易ではありません。 この借金を、相続放棄によって逃れることはできないでしょうか。

あなたの弟さんに妻子はなく、ご両親も他界されているということなので、あなたは、弟さんの相続人ということになります。このため、あなたは、原則として、銀行から請求されている300万円を支払わなければなりません。

しかし、あなたが相続の放棄をすることができれば、この300万円の支払義務はなくなります。そこで、民法の定めを確認すると、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に放棄をしなければならないと書いてあります。この3か月の期間は、熟慮期間(じゅくりょきかん)と呼ばれています。

そうすると、弟さんの死亡時から既に半年が過ぎており、あなたが弟さんの相続人であることは、あなた自身、弟さんの死亡を知ったときからわかっていたと思われますので、もはや相続放棄はできないとも考えられます。

ただし、あなたが3か月以内に相続放棄をしなかったのは、弟さんの相続財産が全く存在しないと信じたためであり、そのように信ずることに相当な理由があると認められるときは、熟慮期間は、相続財産(借金もマイナスの財産と考えることができます。)の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識できる時から起算するという最高裁判所の判例があるので、今回のケースのように、弟さんの死亡時から半年後になされた銀行からの請求によって、初めて弟さんの借金(マイナスの財産=債務)の存在がわかった場合には、弟さんの死亡時から3か月以上経過していても、あなたの相続放棄が認められる可能性が高いと思われます。もっとも、3か月以内に行う通常の相続放棄と比べて、やや苦労することが予想されますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

遺言執行

私は、若干の骨董品(合計額は数百万円)と預貯金(合計額は数千万円)を持っています。私には、3人の子がおりますが、兄弟仲は良くありません。とくに、私所有の骨董品については、3人とも独り占めしたいと思っています。 しかし、私は、自分が死んだら、40年以上の親交のある友人が代表者を務める博物館に、私の持っている骨董品のすべてを寄付したいと考えており、子ども達には、預貯金を公平に与えたいと思っています。 そこで、私は、遺言書を作ることを考えていますが、子ども達が私の遺言を無視して骨董品の奪い合いをするのではないかという不安がつきまといます。このような場合、何か良い方法があれば教えてください。

あなたが遺言を残されても、全相続人が遺言書の存在を無視する、あるいは、一部の相続人が遺言を尊重しないというような行動に出た場合、あなたの遺言は有名無実化してしまう危険があります。このような事態に備えて、遺言の中で、あらかじめ遺言執行者を指定しておくことができます。

ただし、遺言執行者に指定された方は、実際に遺言執行者に就任するか否かの自由を有しているので、断られる可能性があるような方を指定しても不安は解消されないでしょう。やはり、遺言書の作成と遺言執行者の引き受けの双方を弁護士に依頼するのが、最も安全・確実であると思われます。是非、弁護士にご相談ください。

遺留分侵害

1か月前に私の母が死亡しました。私には、兄と妹がおり、兄夫婦は、実家で母と同居しておりました。私と妹は、いずれも他家へ嫁いでおります。10年前に父が亡くなったときは、母と兄弟全員とで話し合いをして、父の財産はすべて母が取得することにしました。ところが、今回は、先日、突然兄から、母の公正証書遺言があると言われ、その遺言書を読んだところ、母の全財産を兄に相続させるとの遺言がなされていました。 本来、相続は兄弟が平等に受けるものだと思っていたのですが、このような遺言があると、私たち妹は、母の財産を一切相続できないことになるのでしょうか。この点について教えてください。

あなたのお母様(被相続人)が生前に遺言をすれば、法定相続分(ご質問のケースだと3分の1ずつ。)と異なる割合で財産を取得させることが可能になります。とくに、ご質問のケースのように公正証書遺言によって遺言をした場合、公証人が事前にお母様のご意思を確認したうえで遺言書を作成するため、後日、遺言の効力を争っても、これを否定することは容易ではありません(他方、相手方から、被相続人が自宅で書いて引き出しにしまっておいた遺言書(自筆証書遺言)が出てきたと言われたケースなどでは、法律が認める遺言の形式を備えていないとか、本人の意思に基づかないものであるとかいったような理由から、後の裁判で遺言が無効とされる可能性が、やや高まると思われます。)。

今回のケースでは、あなたのお兄様だけに全財産を相続させるという内容の公正証書遺言がなされたとのことですが、このような遺言も本人の意思に基づきなされたものであれば有効です。

もっとも、兄弟姉妹以外の相続人には、被相続人の財産から最低限確保できる遺留分(いりゅうぶん)というものが認められており、ご質問のケースであれば、あなたがた姉妹も相続人となるため、お母様の財産の2分の1は遺留分として確保され、それぞれ、その3分の1(あなたの法定相続分)に相当する額、つまり、お母様の財産の6分の1の相当する額については、あなたにも、妹さんにも、お母様の財産について遺留分が認められることになります。

したがいまして、お母様が、前記のような極端な内容の遺言、つまり、お兄様だけに全財産を相続させるという内容の遺言をした場合でも、遺言自体は有効ですが、この遺言に不満のある他の相続人(遺留分権利者)は、法定の期間内であれば、遺留分を保全するために遺留分侵害額請求権(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅうけん)という権利を行使することができます(相続の開始及び遺留分を侵害する遺贈等があったことを知った時から1年以内又は相続開始の時から10年以内の、いずれか早い時期までに行使する必要があります。)。

なお、お兄様が、あなたの遺留分侵害額請求に応じない場合、家庭裁判所に調停の申立てをして話し合うことも可能ですが、話し合いがつかないときには、家事審判手続きではなく、通常の訴訟手続きで解決することになります。遺留分侵害額請求権は、その行使について法定の期間制限があり、また、最終的には訴訟をせざるを得なくなる可能性があるなど、この権利を実現することは、通常の遺産分割手続きと比較して、必ずしも容易であるとはいえず、さらに、近時、法律改正があったところですので、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

相続財産管理

私は、友人に500万円を貸していましたが、先日、その友人が亡くなりました。そこで、友人と長年別居していた友人の配偶者と子に返済をお願いしたのですが、友人の件には一切関わりたくないとのことで、いずれも相続放棄をしました。友人の両親は既に亡くなっていると聞いていますが、兄弟のことは詳しく知りません。私が把握している友人の財産は、友人が住んでいた土地・建物と、相当額の預貯金です。 私の貸金を回収するための方法について教えてください。

まず、あなたの友人に兄弟姉妹等の相続人がいるかどうかを確認する必要があります。この調査は、他人の戸籍を調べる方法によるため、あなた自身が行うことは困難ですが、弁護士であれば、職務上、他人の戸籍を調査することが可能なので、お気軽にご相談ください。

調査をしても、他の相続人が見当たらない場合は、家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立てをする必要があります。

これに対して、調査の結果、相続人の存在が明らかになった場合は、その相続人に貸金の請求することになりますが、その相続人も相続の放棄を行ったため、他の相続人が判明しない状態になってしまった場合は、やはり家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立てをする必要があります。

このような申立てがあった場合、家庭裁判所は、利害関係のない第三者の弁護士等を相続財産管理人として選任するのが通常です。

相続財産管理人が選任されれば、ご質問のケースのように相当額の財産がある場合は、相続財産管理人から返済を受けることができます。ただし、被相続人が他にも複数の債務を負担していたような場合は、公平性に配慮した弁済となり、貸金全額の返済を受けられなくなることもあります。

なお、相続財産管理人選任の申立ては、やや難しいと感じられる方もいらっしゃると思いますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

企業法務

契約書チェック

当社は、これまで自社所有物件で営業を行ってきましたが、今般、支店を出すこととなり、建物を初めて借りることになりました。大家さん側の不動産業者から、賃貸借契約書を渡されましたが、その際、「建物の賃貸借契約書は、大体どこでも同じものを使っていますし、うちの契約書も定型のものです。特に問題ないと思いますので、早めに記名・押印して戻してください。」と言われました。 たしかに、渡された契約書は、不動文字が印字されている定型書式のような体裁となっていますが、賃貸借契約書の内容は、どの契約書でもほぼ同じということで、それほど検討せずに契約してしまってもよいものでしょうか。

賃貸借契約書も、契約書ですから、一般に、賃貸人(大家)側が作成する賃貸借契約書は、賃貸人側に有利な内容となっていることが多いと思われます。もちろん、これから借りようとする場合、どうしてもその物件を借りたいということであれば、ある程度、賃貸人側に有利な内容の賃貸借契約を受け入れざるを得ないということもあるかと思いますが、例えば、企業同士の賃貸借契約であっても、借地借家法の適用を受けるため、賃貸人契約書の中に、借地借家法の強行規定(その規定に違反すれば、契約書に書かれていても、書かれた内容が無効とされる強い効力を持つ規定)に違反する内容の契約条項であれば、当然に是正を求めることができますし、強行規定に違反するとまではいえないとしても、借地借家法の精神や健全な取引通念に照らしてみたときに、あまりに賃借人側に不利な内容の契約条項についても、十分な協議・交渉を行いながら修正を求めていけば、賃貸人側が全部ないし一部の修正に応ずる可能性があります。

したがいまして、不動文字が印字されている定型書式のような体裁の契約書であっても、十分に検討し、賃貸人側と話し合いをしながら、言うべきことは言っていくという姿勢が重要です。

このように、契約を結ぶ前に契約書の内容を十分に検討することは、企業の予防法務という観点から、極めて重要であるといえます。事後に何も問題が起きないようにするため、あるいは問題が起きたとしても不利益を最小限に食い止めるため、弁護士に契約書のチェック(場合によっては契約書の作成自体も)を依頼することもお勧めです。一定の費用はかかりますが、後に生ずる不利益や損害の大きさと比べれば、相当低額で済む場合が多いと思われます。

なお、賃貸借契約書に限らず、契約書等の書面を常時チェックしてほしい、あるいは重要な書面はできるだけ事前にチェックしてほしい、電話や面談による相談についても必要な時に何度でも納得できるまで無料相談をしたい、といったご要望がある場合は、弁護士と顧問契約を結んで、顧問弁護士を確保することをお勧めいたします。

当社は、ある部門の事業に関し、他社との間で取引を行う予定ですが、その取引にかかる契約書については、両者間の力関係を率直に見たとき、当社が優位にあるため、相手方は、当社が求める内容であれば、よほどのことがない限り受け入れるものと思われます。そこで、当社としては、当社に有利な内容の契約書を社内で作成したいと思っていますが、当社の要望をすべて盛り込んだ、当社に有利な契約の契約書を作成し、相手方との間で契約を結ぶことは何ら問題がないと考えてよいでしょうか。

契約は、当事者間の任意の合意があれば、一方当事者に有利な内容であっても、原則として有効です。ただし、契約の内容どおりに動くと貴社の暴利行為とみられてしまうような場合、貴社の業務について特別に定められた法律に違反する場合、あるいは貴社が圧倒的な力の差に乗じて不公正な取引方法をもって取引をする場合等には、契約書に書かれた内容であっても無効とされたり、監督官庁から処分等を受けたりすることがあるため、いかなる場合でも貴社に一方的に有利な内容の契約書を作成してよいとまではいえません。

また、ご質問の取引は、企業間の取引のようですが、かりに、取引の相手方が個人の場合や、相手方が企業であっても貴社の業務との関係では個人と同視される素人とみられるような場合等には、さらに消費者契約法や特定商取引法等の消費者保護の法律を遵守して契約書を作る必要がでてきます。

このように、契約を結ぶ前に契約書の内容を十分に検討することは、企業の予防法務という観点から、極めて重要であるといえます。事後に何も問題が起きないようにするため、あるいは問題が起きたとしても不利益を最小限に食い止めるため、弁護士に契約書のチェック(場合によっては契約書の作成自体も)を依頼することをお勧めします。一定の費用はかかりますが、後に生ずる不利益や損害の大きさと比べれば、相当低額で済む場合が多いと思われます。

なお、契約書等の書面を常時チェックしてほしい、あるいは重要な書面はできるだけ事前にチェックしてほしい、電話や面談による相談についても必要な時に何度でも納得できるまで無料相談をしたい、といったご要望がある場合は、弁護士と顧問契約を結んで、顧問弁護士を確保することをお勧めいたします。

コンプライアンス指導

当社は、新規事業として通信販売を行うことを検討しております。通信販売を行う場合は、特定商取引に関する法律の適用を受けると聞いたのですが、当社といたしましては、法律を守って事業を進めていきたいと考えております。そこで、この法律を守って事業を行うべく必要な知識や書式等について弁護士さんのアドバイスを受けたいと考えているのですが、このような要望に応えていただけますか。

通信販売を行う場合、特定商取引に関する法律(特商法)の定め(クーリングオフ等)に従う必要があるのは当然ですが、事業者は、この法律に限らず、消費者契約法その他の関係法規をすべて遵守して通信販売事業を行わなければなりません。

不安な点や疑問な点があれば、あとで不測の不利益を被ることのないよう、早めに弁護士に相談し、書式等の整備も含めてアドバイスを受けることをお勧めいたします。

なお、事業に関する法的アドバイスを継続的に行ってほしい、あるいは重要な案件はできるだけ事前にアドバイスしてほしい、電話や面談による相談についても必要な時に何度でも納得できるまで無料相談をしたい、といったご要望がある場合は、弁護士と顧問契約を結んで、顧問弁護士を確保することをお勧めいたします。

当社は、これまで事業拡大、利益増大を最重要視して事業を展開し、一定の業績を上げてきたと自負しておりますが、他方で、同業他社との競争に勝つこと、あるいは、当社に有利な条件での取引を実現すること等に目を奪われ、自分たちのやり方が法的に問題ないものなのか、不安を覚えることもあります。当社といたしましては、このような不安を解消し、自信を持って事業に取り組みたいと思っているのですが、このような当社の要望に添う形で弁護士さんからアドバイスを受けることは可能ですか。

我が国には、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)があり、不公正な取引は規制を受け、フェアプレー精神で自由な競争が行われるよう、法整備がなされています。

例えば、商取引において、取引相手等との力関係が取引に影響を及ぼすことがあることは、いわば当然であり、力の優劣が取引に反映されたからといって、直ちに独占禁止法等の法令に違反するわけではありませんが、これが度を越して、他社の取引の自由を不当に制限するような影響力を持つようになる場合には、法の規制を受けることがあります。

昨今の企業を取り巻く状況のもとでは、企業が法令を遵守してフェアな競争を行うべきことは、もはや必要不可欠の要請であり、これを無視ないし軽視することは、社会の最低限のルールを破ることと同義であり、結果的に自分で自分の首を絞めるに等しいこととなります。 ルールがあってはじめて自由競争が成り立つのであり、このルールを破る者は、自由競争の市場の崩壊を招く存在として、社会から排除されてしまいます。

したがいまして、貴社が、不安を解消して自信を持って事業に取り組みたいとのお考えであれば、法令や商道徳などを遵守し、フェアプレー精神で企業を運営されることが重要です。このような企業こそ、社会や消費者の信頼を得ることができるのであり、ひいては企業全体のイメージアップや格付けの上昇につながると思われますので、コンプライアンス(法令遵守、企業倫理)を明確に意識して企業運営にあたることは極めて重要であるといえます。

コンプライアンスに関するアドバイザーとして、弁護士に協力を求めることは、企業の継続的な発展にとって有益であると考えられます。是非、弁護士にお気軽にご相談ください。

なお、コンプライアンスに関するアドバイスを継続的に行ってほしい、あるいは重要な案件はできるだけ事前にアドバイスしてほしい、電話や面談による相談についても必要な時に何度でも納得できるまで無料相談をしたい、といったご要望がある場合は、弁護士と顧問契約を結んで、顧問弁護士を確保することをお勧めいたします。

売掛金等回収

私は、小売店に雑貨を卸売りする会社を営んでいますが、取引先の中には支払いが遅れがちな会社がいくつかあり、最近、未回収の売掛金の額が増加しており、売掛金の回収や管理に苦慮しております。このような未回収となってしまう売掛金の発生を防いだり、回収をスムーズに行ったりできればよいと思うのですが、どのようにすればよいかアドバイスしてください。

売掛金や未収金の回収をスムーズに進めるためには、契約書の作成等の事前の備え(予防法務)と事後における適切な対処(内容証明郵便による督促、訴訟提起等)が必要となります。

事前の備え(予防法務)は、損害自体の発生を未然に防止するという意味で極めて重要であり、まずは会社の実情に即した、しっかりとした内容の契約書等の書式を作ることをお勧めします。このような契約書等の中に、当方に有利な条項、当方の不利益を最小限に抑え込んでしまう内容の条項、あるいは売掛金等を保全するための人的・物的担保の設定(連帯保証人の加入や物品等に対する担保設定)と優先的な回収に関する条項等を漏れなく入れていけば、それだけで相当多くの問題や損害の発生を未然に防止することができ、売掛金の回収等もスムーズに進むと思われます。

また、残念ながら問題が発生してしまった場合は、事後における適切な対処として、内容証明郵便による督促、交渉、裁判所に対する支払督促の申立て、調停申立て、訴訟提起、判決等に基づく強制執行の申立て等が必要となりますが、これらの手続等を遺漏なくスムーズに進めていくためには、法律の専門家である弁護士に相談することが最も適切であると考えられます。実際に裁判等を行う場合は、当方の主張を裏付ける立証の手段として、見積書、発注書、受注書、契約書、納品書、請求書、受領書、売掛台帳等の証拠資料があるか否かも重要になってきますので、日頃より、これらの重要な証拠資料を作成、保管しておくことも必要です。これらの証拠資料が不足するために、売掛金や未収金の存在を立証することができず、泣き寝入りせざるを得ない結果となることもあります。

このような事態を防ぐためには、売掛金等の回収に関して、先に述べた予防法務に重きを置いているか否かで、事後的に得られるメリット、あるいは被る損害の額などが桁違いに異なってくることがあります。

売掛金等の回収に関するアドバイスを継続的に行ってほしい、あるいは重要な案件はできるだけ事前にアドバイスしてほしい、電話や面談による相談についても必要な時に何度でも納得できるまで無料相談をしたい、といったご要望がある場合は、弁護士と顧問契約を結んで、顧問弁護士を確保することをお勧めいたします。

労務管理アドバイス

勤務態度不良の従業員(正社員)がいるので解雇したいと思います。人から聞いた話では、平均賃金の一か月分を払えば即時に解雇できるとのことなので、早速そのような方法で解雇したいと考えているのですが、問題ないでしょうか。

ご質問の従業員のような雇用期間の定めのない労働者(一般に正社員と言われます。)を解雇する場合でも、いわゆる解雇予告手当さえ払えば簡単に解雇できるとお考えの経営者の方もいらっしゃるようですが、法的には、解雇には客観的に合理的な理由を要し、かつ社会通念上相当と認められなければ解雇は許されないこととなっておりますので、十分な注意が必要です。ご質問のような従業員の方でも、抽象的に勤務態度不良というだけでは不十分で、その根拠となる具体的かつ明確な事実が必要であり、しかも、企業の側で解雇という最大の不利益処分を避けるための努力をしたという事情(例えば、軽い不利益処分を何度か行ったが改善されなかったとか、配置転換その他改善のための方策を試みたが奏功しなかった等)が必要になります。

いずれにしても、解雇については慎重な対応が必要となりますので、事前に法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

労務管理を含め、企業法務全般に関するアドバイスを継続的に行ってほしい、あるいは重要な案件はできるだけ事前にアドバイスしてほしい、電話や面談による相談についても必要な時に何度でも納得できるまで無料相談をしたい、といったご要望がある場合は、弁護士と顧問契約を結んで、顧問弁護士を確保することをお勧めいたします。

労働事件

未払い賃金

給料の一部を在庫商品等で現物払いすることは許されますか。

賃金は原則として通貨で支払わなければならないため、現物払いをすることはできません。ただし、労働組合と合意ができ、会社と労働組合との間に協約が結ばれた場合は例外的に可能です。

給与からの天引きは、どのような場合に許されますか。

賃金は、原則として全額を支払わなければなりませんが、給与所得税の源泉徴収、社会保険料の控除、財形貯蓄金の控除などは、法律によって特別に認められています。また、労働者の過半数で組織する労働組合またはその過半数を代表する者と協定を結べば、全労働者の給与から積立金や貯蓄金等を天引きすることができます。

震災により会社が被災したため、自宅待機を命じられた場合、その間の賃金は請求できますか。

会社の営業所が全壊した場合や、工場が停電により操業できなくなった場合など、不可抗力による休業の場合は、その間の賃金を請求することはできません。ただし、震災により、主要な取引先から原材料を入手することができなくなって休業した場合で、使用者が努力すれば他から原材料を入手できたような場合など、不可抗力とまではいえない休業については、使用者は、労働者に対し、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う義務があります。

不当解雇

数回遅刻、欠勤を繰り返しただけで、職場を解雇されたことは、不当解雇に当たりますか。

数回の遅刻や欠勤が、仕事に大きな影響を与えなかったのであれば、解雇は重すぎるため、不当解雇にあたるといえます。一方、遅刻といえども、使用者が何度も注意しても正されず、将来的に正される見込みもない場合には、解雇が認められる可能性があります。

休暇中に事故にあって怪我をし、入院をした場合、そのことを理由として解雇されることはありますか。

仕事と関係がない原因により怪我や病気をした場合で、一時の入院にとどまらず、長期間にわたって働くことができない場合は、仕事の提供ができないことを理由として解雇することが認められます。ただし、軽作業であればできる程度の病気であり、軽作業をする部署が他に存在する場合や、休職制度が設けられている場合に、職場の変更や休職制度の利用をすることなく、直ちに解雇した場合には、不当解雇にあたる可能性もあります。

業務中に起きた事故により怪我をした場合、そのことを理由として解雇されることはありますか。

仕事を原因とする怪我や病気のために働くことができない労働者については、その怪我や病気を治す期間に30日を加えた期間は、解雇してはならないことになっています。しかし、治療を始めてから3年経っても怪我や病気が治らない場合には、使用者は、解雇理由がある限り、平均賃金の1200日分の補償を支払うことにより、解雇することが可能です。

パワハラ・セクハラ

職場でパワー・ハラスメントが行われた場合、行為者個人だけでなく、事業主にも責任はありますか。

事業主は、労働者の健康を害することのないよう、また、労働者の人格的な尊厳が傷つくことにより、仕事に支障を生ずることのないよう、職場の環境を適切なものにする義務があります。事業主が、職場内でパワー・ハラスメントが行われていることを知っており、被害が発生することを予想することができたにもかかわらず、それを放置していた場合には、事業主は従業員に対し、損害賠償の責任等を負います。

職場でセクシャル・ハラスメントが行われた場合、行為者個人だけでなく、事業主にも責任はありますか。

事業主は、セクシャル・ハラスメントを予防するために、職場においてしてはならないことを明確し、これを従業員に徹底させるための活動を行うこと、被害者が相談できる窓口を設置すること、相談があった場合、事実関係を調査し、適正に対処することなどが義務づけられています。事業主がこれらの義務を怠った結果、従業員に対するセクシャル・ハラスメントが起きた場合は、事業主は従業員に対し、損害賠償の責任等を負います。

債務整理

任意整理

貸金業者から取立ての電話が頻繁にかかってきており、対応に困っています。任意整理をすれば、電話は止まるのでしょうか。

弁護士は、任意整理を受任した場合、債権者に対して受任の事実を通知し、それ以後は、受任弁護士が債務者に代わって債権者との交渉の直接の窓口となります。

そして、上記通知があったにもかかわらず、貸金業者が、正当な理由なく債務者に直接電話をかけて債務の返済を要求することは、法律上禁止されています。したがって、貸金業者からの取立ての電話は原則として止まります。

私は、消費者金融からの借金に加えて住宅ローンを毎月返済しています。生活が苦しいので任意整理を考えていますが、住宅ローンの返済だけはこれからも今までどおり続けていきたいと考えています。こうしたことは可能でしょうか。

破産や民事再生と異なり、任意整理の場合においては、債権者の一部を債務整理の対象外とすることにつき

ある程度柔軟に対処することができますので、住宅ローンを対象外として他の債務についてのみ任意整理の対象とすることも可能です。

自己破産

私は会社勤めをしていますが、自己破産をした場合、その事実は勤務先に知られてしまうのでしょうか。その場合、会社を辞めさせられたりしませんか。

自己破産の手続をとった場合でも、裁判所からあなたの勤務先に対して、電話や手紙等によって破産の事実について連絡・通知がされることはありません。

また、破産手続が開始されると官報に公告がなされますが、一般の会社が官報を毎日チッェクすることは稀でしょうから、勤務先があなたの自己破産の事実を知る可能性は低いと考えられます。

また、仮に会社が社員の自己破産の事実を知ったとしても、自己破産のみを理由として会社が当該社員を解雇することは、原則としてできません。

自己破産をしても、支払を免れることができない債務には、どんなものがありますか。

税金や社会保険料の滞納分、婚姻費用や扶養料などの親族関係に関係する債務、罰金などについては、自己破産をしても支払を免れることができません。

また、破産者に、浪費・賭博等の射幸行為や、債権者を害する目的で財産を隠匿するなどの行為があった場合には、免責不許可となり、その他の債務についても支払を免れることができなくなる場合があります。

自己破産をした場合、全ての財産を手放さなければいけないのでしょうか。

自己破産をした場合でも、生活に欠くことができない衣服や家具等の財産、現金(99万円が上限)、破産手続開始後に新たに取得した財産については、原則として自分で管理し、自由に処分することができます。

このような財産を自由財産といいますが、裁判所は、様々な事情を考慮したうえで自由財産の範囲を拡張することもできます。

民事再生

小規模個人再生とは、どのような手続なのですか。

小規模個人再生とは、住宅ローン等を除いた債務の総額が5000万円以内の個人債務者が、返済額を総債務額の2割程度に減額してもらったうえで、将来得られる収入から原則3年間(特例5年間)で返済を行っていくという制度です。

ただし、この制度を利用するためには、将来において安定した収入を得られる見込みがあることが必要です。また、最低でも100万円は弁済しなければなりません。

私は、現在住んでいる住宅のローン返済が困難になり、消費者金融から借金を重ねてきましたが、限界を感じています。民事再生をした場合も、破産の場合と同じように、自宅は手放さなければならないのでしょうか。

民事再生手続においては、住宅ローンの支払が困難になった個人債務者が住宅を失うことなく生活を再建できるように、住宅ローン債務の内容を変更する特別の条項を、再生計画の中に定めることができる場合があります(住宅資金貸付債権に関する特則)。

したがって、民事再生の場合には、この特則を利用することによって、自宅を手放すことなく債務を整理できる可能性があります。

特定調停

特定調停のメリットとデメリットはなんでしょうか。

特定調停は、裁判所を利用する手続ですが、破産手続等に比べて申立て手続が簡便であり、費用も比較的安価であるというメリットがあります。

もっとも、債権者が多数の場合にはそれなりの費用がかかりますし、裁判所が関わるとはいえ、個々の債権者との合意ができなければ調停は成立しませんので、強硬な債権者が存在する場合には、特定調停手続による問題解決は困難な場合があります。また、債務者本人申立てによる特定調停においては、債務者に不利な内容の調停が成立してしまう例もあり、こうした点に注意が必要です。

過払金請求

私は、消費者金融から借金をしては返済をすることを繰り返してきましたが、過払金請求ができるかどうかを判断する目安はありますか。

まず、あなたが消費者金融業者から最初に借入れをした時期が重要なポイントになります。最初の借入れの時期が平成19年ころより後である場合は、多くの貸金業者が法定利率で貸付けを行うようになってからの借入れである可能性が高いので、過払金が発生する可能性は低いと思われます。

さらに、取引期間の長短も重要なポイントになります。一般に、取引期間が5~6年以上に及んでいれば、過払金が発生している可能性があり、10年以上に及んでいれば、高い可能性で発生しているといえるでしょう。

その他にも、過払金請求ができるかどうかを判断するポイントはありますので、詳しくは当事務所までご相談ください。

過払金請求に、請求期限や締め切りのようなものはありますか。

原則として、貸金業者との取引が終了した時点から10年以内であれば、請求は可能です。

また、10年以上経過しているように思われる場合でも、請求できる可能性がありますので、まずは当事務所までご相談ください。

交通事故

交通事故

交通事故に遭ってしまいました。まずは何をしなければなりませんか。

まず、負傷者がいる場合、負傷者を救護してください。一般的には、負傷者の安全な場所への移動、AED装置や人工呼吸による救命活動、119番通報などをすることになると思います。負傷者の救護は、道路交通法で、当該事故に係る車両等の運転者その他の乗務員に課された義務になります。

次に、警察に通報してください。これも道路交通法で定められた義務になります。

加害者から「賠償するので警察には報告しないでほしい」と言われるケースもあるようですが、警察に届けておかないと、交通事故証明書が取れなくなり、損害賠償を受けられなかったり、保険金を請求できなくなる危険もあるなど、後々トラブルの原因ともなりますので、軽微な事故でも必ず警察に届け出てください。

事故の後、車を移動させてしまったというケースもよく聞きますが、車を移動させてしまうと事故当時の状況が分からなくなり、事故態様について争われる結果になることもありますので、警察が来るまでは事故当時のままにしておく方がよいでしょう。

どうしても動かさなくてはならない場合でも、最低限、事故車の状況を写真で撮影したうえで、安全な場所に移動するよう心がけてください。

最後に、自分の加入する保険会社の担当者又は保険代理店の方にも連絡しましょう。保険会社からは事故時の対応について適切な助言が得られます。

事故現場ではどのようなことに注意する必要がありますか。

相手が誰であるかを確認してください。警察が来れば、警察が確認してくれることもありますが、相手の名前(フルネーム)、勤務先、連絡先(電話番号等)は聞いておくと、その後の手続が円滑に進みます。

また、軽い怪我であっても、医師の診断を受けるようにしてください。気が動転している事故直後は意識しなくても、後になってから症状が出ることもありますから、必ず医師の診断を受けるようにしてください。

交通事故について相談したいのですが、誰に相談したらよいですか。相談する際には、どのような資料が必要ですか。

自分が契約している保険会社もしくは弁護士に相談することをお勧めします。

相談の際は、事故の状況を説明した図面(事故の場所、道路の状況、衝突に至る車両の動き、事故の日時、当時の天候などが記載されたもの)その他事故に関連する書類があるとよいでしょう。交通事故証明書や相手方から送付された書類や相手方に送付した書類がある場合には、そうした書類も必要です。

人身事故で治療を受けている場合は診断書や治療費の明細書なども必要になります。

交通事故を起こしてしまいました。どのような責任が生じますか。

交通事故を起こした人が負担する責任は大きく分けて3つあります。

まず、行政上の責任として、免許停止ないし取消などの処分がなされることがあります。

次に、他人を死傷させてしまった場合は、事故態様や結果によっては自動車運転過失致死傷罪ないし危険運転致死傷罪などの刑事責任が生ずる場合があります。

最後に、加害者は、被害者に与えた損害を金銭で賠償する責任(民事上の責任)が生じます。

交通事故の相手方との話し合いがまとまりません。こうした場合、どのようにしたらよいでしょうか。

相手方との話し合いがまとまらない場合、裁判所の手続としては調停を申立てたり、訴訟提起をすることが考えられます。裁判以外にも、弁護士会等が関与して設けた交通事故解決のための手続もあります。

また、裁判所等への申立てをしない場合、契約する任意保険会社や弁護士に依頼して、相手との示談交渉を行うこともあります。

調停申立や訴訟提起等は専門的な手続であり、必ずしも一般の方が利用しにくい場合もありますので、相手方との話し合いがまとまらない場合は、早めに保険会社ないし弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士を頼みたいのですが、お金の余裕がありません。どのようにしたらよいですか。

日本司法支援センター(法テラス)では資力の乏しい方が弁護士に相談・依頼することを支援する事業として民事法律扶助という制度を設けています。また、他にも無料相談が可能な場合があります。

資力がない場合等には、この制度を利用できる可能性がありますので、まずは弁護士に相談してみてください。

交通事故に遭いましたが、交通事故の損害賠償請求にも時効があるのですか。

交通事故の損害賠償請求は、不法行為による損害賠償請求であり、損害及び加害者を知った時から3年の時効にかかります。時効を止めるためには訴訟提起などの手続が必要となります。事故からある程度の時間が経過している場合は、時効の関係もありますので、早めに弁護士に相談するとよいでしょう。

人身事故

人身事故の場合、加害者に損害賠償請求できるのは誰になりますか。

傷害事故の場合、怪我をされた方(被害者)は、加害者に損害賠償請求ができます。

死亡事故の場合、被害者の相続人が請求権者となります。

相続人以外でも、被害者に対して扶養請求権のある人(内縁の妻など)は損害賠償請求ができる可能性があります。

死亡の事故の場合や、傷害の程度がひどく、重大な後遺障害が残るような場合は、被害者本人だけでなく、被害者の一定の近親者(原則として、父母、配偶者、子)も慰謝料を請求できる場合があります。

なお、実際の請求では、色々な問題がありますので、弁護士に相談することをお勧めいたします。

人身事故の場合、加害者に対してどのような請求ができますか。

傷害事故の場合、①治療費、②休業損害(入院して休業した場合など)、③入通院交通費、④入通院慰謝料などが主な賠償の内容となります。

さらに後遺症が残った場合、⑤後遺障害分の慰謝料、⑥逸失利益(後遺症が残ったことにより失われた将来の利益)も賠償の対象となります。

死亡事故の場合、①慰謝料、②逸失利益(被害者が死亡することなく働いたとしたら将来得られたであろう利益)等が賠償の対象となります。

物損事故

物損事故の場合、加害者に損害賠償請求できるのは誰になりますか。

物損事故の場合、損害賠償請求できるのは、原則として損害を受けた車の所有者になります。

物損事故の場合、加害者に対してどのような請求ができますか。

請求の中心は修理費用となりますが、事故時の車両価値が修理費を下回る場合は、事故時の時価を超えて修理費用を請求することはできないとされています(いわゆる経済的全損)。

その他、修理期間中の代車料(相当な期間に限定される場合があります。)、事故車が営業車だった場合の営業損害(いわゆる休車損)、事故車が新しい場合のいわゆる格落ち損(評価損)なども事情によっては賠償の対象となることがあります。

これらの賠償が認められるかどうかは事情によって大きく左右されますので、よく弁護士等の専門家と相談することが大切です。

不動産・売買・賃貸

借地・借家・賃貸借

私は、土地を賃借し、その土地上に建物を所有して居住しています。万一、土地が売却され、土地の新所有者から建物を取り壊して土地を明け渡すよう請求された場合、これに応じなければならないのでしょうか。

賃貸借契約は、貸主と借主との間の契約であり、貸主が目的物を譲渡した場合、借主は、新しい所有者に対しては、賃貸借契約に基づき目的物を使用する権利を主張することができないのが原則です。

しかし、土地の賃貸借の場合、それが建物の所有を目的とした土地の賃貸借契約であり、貸主がその土地上に建物を所有し、その建物を登記しているような場合には、土地の新所有者に対しても、土地の賃貸借契約に基づいて土地を使用する権利(借地権とも呼ばれます。)を主張することができます。したがって、この場合は、建物収去土地明渡請求に応ずる必要はなく、従前どおり、土地を使用し続けることができます。もっとも、土地の新所有者が土地について所有権移転登記を経由した場合には、新所有者が土地の新たな貸主になりますので、賃料は新所有者に対して支払う必要があります。

ところで、建物は、土地を賃借している人が所有し、その人の所有建物として登記している必要があり、その人の配偶者や子の所有建物として登記されていても、上記の理は妥当せず、賃貸借一般の原則が適用されるため、この場合、土地を賃借している人は、土地の賃借権について登記をしているようなケースを除き、原則として、土地の新所有者に対して借地権を主張することができません。

私は、建物を賃借し、居住しています。建物が売却され、建物の新所有者から建物の明渡しを求められた場合、これに応じなければならないのでしょうか。

建物の場合は、建物の賃借権を登記するか、賃借した建物の引渡しを受ければ、その後に建物を譲り受けた者に対しても建物の賃借権を主張することができます。居住しているのであれば、問題ないものと思われます。新所有者が建物について所有権移転登記を経由した場合は、新所有者が新たな賃貸人になり、賃貸借契約が存続します。

アパートを借りて居住していたところ、契約が終了して退去する際に、賃貸人から修繕費用や清掃費用などを請求されました。払う必要があるのでしょうか。

賃借人は、借りた物を原状に復して返還する義務を負いますが、これは借りる前の状態に戻すと言う意味ではなく、賃貸借契約においては目的物について通常使用される損耗(そんもう)、つまり経年劣化はある程度は当然生ずることが予定されているものであり、通常の使用をしていればあり得べき状態に戻して返還すれば足りるのです。

通常生ずる損耗の修繕費用を賃借人の負担とするためには、通常損耗の原状回復義務を賃借人に負わせる旨の特約を、賃借人が費用負担すべき通常損耗の範囲まで賃貸借契約書に明記する形で合意するか、このような特約内容を賃貸人が口頭で説明し、賃借人がそれを明確に認識して合意するなど、特約による明確な合意が必要です。

したがいまして、請求されている修繕費用等は、通常生ずる損耗の修繕費用等か否か、通常生ずる損耗である場合は、その損耗の修繕費用や清掃費用を賃借人の負担とする旨の明確な特約があるか否か、をまず確認する必要があると思われます。

また、そのような特約がある場合であっても、賃貸人が事業者で、賃借人が消費者の場合、特約が一方的に賃借人に過大な負担を課すものであるとして無効とされる場合もあります。

建物を賃借して居住していますが、雨漏りがあり、修繕する必要があります。これは、賃借人の負担で行わなければならないのでしょうか。

賃貸借契約においては、賃貸人は、目的物の使用に必要な修繕をする義務を負います。家屋において雨漏りがする場合は、使用に支障を来すものと考えられますので、賃貸人は、速やかにこれを修繕する必要があると考えられます。

賃貸人の負担に属する修繕について、賃借人が修繕した場合、その費用については、賃貸人は直ちに賃借人に支払わなければなりません。

父が建物を賃借し、一家がその建物に居住してきました。父が亡くなったのですが、賃借人の死亡により賃貸借契約が終了して、私達は、建物を明け渡さなければならないのでしょうか。

賃貸借の場合、借主が死亡しても、借主の地位が相続され、賃貸借契約は継続します。したがって、今お住まいの建物に住み続けることができます。

ところで、賃貸借ではなく、無償で借りている場合は、借主の死亡により契約が終了しますので、貸主から明渡しを求められた場合は、法的には、原則として応じざるを得ないことになると考えられます。

不動産取引

不動産を購入しようとしているのですが、契約内容が複雑でよくわかりません。どうしたらよいですか。

不動産は高額な買い物ですから、後になって後悔しないためにも契約内容はきちんと確認しておきましょう。その際には、販売者から事前にもらえる重要事項説明書をまず確認することが重要です。重要事項説明書とは、取引の対象となっている不動産や、契約の内容について説明するための書面です。この書面に記載されていることをしっかり理解したうえで、契約するかしないか判断するようにしてください。

もし、重要事項説明書を読んでも契約の内容がよくわからないときには、弁護士に相談すると良いでしょう。弁護士にご相談いただければ、契約内容等についてわかりやすくアドバイスいたします。

購入した中古の建物に欠陥があったので販売者に損害賠償を請求したいのですが、できますか。

契約の趣旨に適合しないような欠陥があるときには、損害賠償請求ができる場合があります。また、その欠陥が重大で、欠陥のせいで契約した目的を達成できないようなとき等には、契約を解除できることもあります。

強制競売

相手方への請求額が不動産の価格に比べて少額なのですが、それでも強制競売は申し立てられるのですか。

はい。相手方への請求額がいくらであっても、強制競売の申立てをすることができます。

差し押さえようとしている不動産に住んでいる人がいるのですが、それでも強制競売の申立てはできますか。

はい。対象となる不動産に住んでいる人がいたとしても、強制競売の申立てをすることができます。

強制競売手続によって不動産が売却されると、その不動産の所有権は競売の買受人に移転します。買受人は、その不動産の居住者に対して引渡しを求めることができます。ただし、対抗力のある賃借権があるなどの場合には、買受人であっても引渡しを請求できないことがあります。

担保不動産競売

担保不動産競売をするためには、まずお金の借り主に裁判で勝たないといけないのでしょうか。

裁判をする必要はありません。相手が約束どおりにお金を払ってくれない場合には、裁判を経ず直ちに競売手続に入ることができます。

担保に取っていた不動産が第三者に差し押さえられ、強制競売手続の申立てがされてしまいました。担保権はどうなるのでしょうか。

第三者が申し立てた強制競売手続によって不動産が売却されると、担保権は消滅してしまいます。ですが、担保権を有していた人は、強制競売手続による売却代金から、強制競売の申立てをした債権者や一般の債権者より優先的にお金を回収することが可能です。

建築紛争

自宅を新築するため、建設会社と工事請負契約を締結したいと思っていますが、注意すべき点はありますか。

契約内容が明確であるか等を十分に確認し、納得のいく契約内容になった場合に契約を締結することが重要です。

確かに、自宅を新築する場合、完成までに一定程度の期間を要したり、工事に多数の人間が関与することになることなどから、工事開始後に契約締結段階では予測できないような問題等が生じることも少なくありません。また、どうしても契約当初には、時間がないなどの理由から、簡易な契約書しか作成することができない場合(「詳細な内容は、工事が開始した後で、注文者と請負人が話し合って詰めていく」という形で工事が始まる場合)もあります。

このように、工事開始後に当初予測できなかった問題等が生じた場合や、工事途中で細部を決めざるを得ないような場合、通常、注文者と業者との間で話し合いを行うことになると思われますが、その場合は、その内容等をできる限り詳細(工事箇所や、その箇所の費用、使用する材料の内容など)に書面化すべきです。特に、建築トラブルの多くは、「代金」と「工事内容(欠陥等)」ですので、注文者は、これらの問題については、話し合い等の結果を書面に残しておくべきです。

なお、書面を作成する場合、一方当事者の認識だけを記載しているように読めるようなものではなく、注文者と請負人(建築会社)の両方が合意していることがわかるような記載を心がけるべきです。

以上のような注意点は、新築住宅の建築を頼む場合だけではなく、建売住宅を購入する場合や、リフォーム工事を依頼する場合にも妥当するものです(リフォーム工事の場合は、特に気をつける必要があります。リフォーム工事に欠陥がある場合、その欠陥が工事によって生じたのか、もともとあった欠陥なのかを判断するためには、工事の「前」と工事の「後」とを比較する必要がありますので、工事の「前」の状況等に関する書面については、できる限り詳しいものを残すように心がけるべきです。)。

新築住宅が完成した後、業者から追加・変更工事の代金として、高額な追加代金を請求してきたのですが、支払わなければならないのですか。

あなたと業者との間で追加・変更工事に関する合意がなされ、その合意どおりに業者が追加・変更工事をした場合であれば、原則として、合理的かつ相当な金額を報酬として支払わなければなりません。これが口頭での合意であったとしても、同様に、報酬を支払わなければなりません。

口頭で追加・変更工事がなされた場合、「そもそもそのような合意があったのか否か」ということと、「合意があったとして、追加費用は合理的かつ相当か」ということが主に問題になることが多いと思われます。

前者について裁判などで争われた場合、結論はケースバイケースになると思われますので、そのような紛争を事前に防止することが重要になります。そのためには、口頭で追加・変更工事の約束をしないことが重要です。また、追加・変更工事の内容等をできる限り詳細に書面化すべきです。

後者については、「工事内容の相場」が明確でないことから、この点が裁判で争われた場合も、結論はケースバイケースになると思われますので、そのような紛争を事前に防止することが重要になります。そのためには、事前に、費用内容についても、業者と綿密な打ち合わせ等を行い、納得できる金額でなければ追加・変更工事を行わないという対応が重要です。

業者に自宅の新築工事を依頼したのですが、工事途中で欠陥があることが判明しました。業者に対して抗議したのですが、業者は抗議を受け入れずに工事を続けています。どうすれば良いでしょうか。

1 基本的な考え方

業者には、原則として、欠陥のない建物を完成させる義務があるので、あなたは、業者に対して、相当の期間を定めて欠陥の補修を催告することができますし、業者がそれを履行しないときは、業者の債務不履行(契約違反)を理由として、請負契約を解除することができます。あなたが請負契約を解除した場合であっても、あなたは、欠陥のない既施工部分の報酬を業者に支払わなければならない場合がありますが、解除したことによって生じた損害の賠償を業者に求めることもできます。

2 「欠陥」について

よく問題になるのが、「欠陥」の内容です。欠陥の内容を大きく分けると、「法令、契約書、設計図等に明らかに違反している工事」と「法令、契約書、設計図等に違反しているとは直ちにいえないような欠陥」に分類できるものと考えられます。後者は、「塗装にむらがある」「床にペンキをこぼしたような痕跡がある」「材木の切り方が雑である」など、業者の技術的な問題の場合などです(他にも、契約書等が存在しない又は簡易なものしか存在せず、工事内容の細部に関する合意が不明確で、約束違反かどうかを客観的に判定することが困難な場合があります。)。

前者については、1のような基本的な考え方に従った処理が可能な類型であると言えますが、後者については、そもそも「欠陥か否か」が争われる可能性があります。「むらがあるか否か」や「雑か否か」など、人によって評価が分かれるような問題が含まれていることもありますし、契約書等が不明確で約束違反(欠陥)かどうかよくわからない場合もありますので、後者の場合、「欠陥」自体を明確にすることが容易でない場合が多いと思われます。

「法令、契約書、設計図等に明らかに違反している工事」か否かを一般の注文者が判断することは困難ですから、それを判断するために、第三者の建築士事務所に工事監理業務だけを依頼することも考えられます(別途費用がかかるのが通常です。)。

「法令、契約書、設計図に違反しているとは直ちにいえないような欠陥」については、後で、何らかの法的権利を行使することが困難になる可能性がありますので、とにかく、早い段階で、問題点が明確になるような書面を作成する必要があります。この点についても、第三者の建築士事務所に工事監理業務を依頼することで、中立な立場から適正な工事になるよう尽力してもらえる可能性があります。

3 工事途中での解除について

民法上、請負契約を解除する場合の遡及に関する規定がないことなどから、請負契約が解除された場合、契約当事者は原状回復義務を負うのが原則であるとされています。つまり、例えば、更地に住宅を建てる契約の途中でその契約が解除された場合、業者は、建築途中の建物を壊して更地に戻したうえで、その土地を注文者に返還する義務を負うということです。

しかし、ケースによっては、上記のような解除が制限される場合があるので注意が必要です。つまり、建築工事において、工事内容が可分であり、かつ当事者が既施工部分の給付について利益を有するときは、特段の事情がない限り、既施工部分に関する契約を解除することはできません。どのような場合に解除が制限されるのかということは、様々な事情を考慮して判断されることになるので、ケースバイケースと言わざるをえません。

業者に自宅の建築を頼み、自宅が完成したので、その自宅の引渡しを受けて生活していたところ、住み始めてしばらくしてから、雨漏りがするようになりました。これは、業者が手抜き工事したことが原因ではないかと考えております。建築業者に対してどのような請求ができるのでしょうか。

1 基本的な考え方

完成した自宅に請負契約の内容に適合していない欠陥が存在する場合、あなたは、業者に対して、相当期間を定めて、修補することや報酬の減額を請求することができますし、あなたに「損害」が生じていれば、その損害を賠償するよう請求することができます。

2 因果関係

仮に、完成した自宅に欠陥があったとしても、それが、建築業者の工事によって生じたものと言える必要があります。例えば、雨漏りがあったとしても、その原因が、近所の子どもが野球をしていて、ボールが屋根にぶつかったことが原因で雨漏りするようになった場合などは、明らかに業者の責任ではありませんので、業者に対して雨漏りの責任を追及することはできません。そのため、雨漏りの原因が、建築工事の不備等の原因を調査する必要があるのですが、このような調査には建築士などの建築の専門家の力が必要ですので、自宅の問題に気付いた場合には、速やかに建築士などの建築の専門家に相談すべきです。

3 損害

雨漏りのケースであれば、雨漏りによって床が腐ったなどの事情があれば、その床を修繕する費用などが損害になると思われます。また、上記のように、建築士に依頼して欠陥の調査をした場合、調査費用なども損害と認められる可能性があります。

4 責任の存続期間

自宅に欠陥があることをあなたが知ってから1年以内に業者に対し,欠陥について通知をしなければ,上記の欠陥について業者に責任を追及することができなくなります。

また、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」という特別な法律が存在しており、新築住宅における一部分(構造耐力上主要な部分等)については、引渡しから10年間、建築業者は瑕疵担保責任を負い、10年より短い期間を定めた特約は無効であるとされています。

高齢者支援

パーソナルロイヤー

私は、社会福祉法人が運営する高齢者向けの施設で、施設長をしております。当施設の入所者の方々の中には、通帳やはんこの管理・金銭管理等を施設側でやってほしいと希望される方や、ご自身の親族に対する様々な思いから、ある親族には自分の財産を沢山やりたいが、別の親族は自分に冷たくするし、自分のお金を勝手に持っていくので財産は一銭もやりたくない、だから施設も協力してほしい、遺言書も施設で作ってほしいなどと希望される方もいらっしゃいます。しかし、私どもは、法律の専門家ではないため、他人の財産管理等をお引き受けすることに種々の不安を持っておりますし、遺言書の作成や親族間のもめごとの解決などには関与できないと考えております。そこで、現在、当施設では、法律の専門家である弁護士さんにご協力いただくことを検討しており、その検討過程で「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」という言葉も耳にしました。 私どもといたしましては、施設入所者の方々が弁護士さんのサポートを受けられるようになれば、現在抱えている不安等が解消されるのではないかと期待しているのですが、施設入所者の方々に対するケアは、単発のものや部分的なものであってはならず、継続的でトータルな支援が必要であると考えているため、「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」がこれに合致するものか知りたいと考えています。また、弁護士さんは、福祉や医療の専門職との連携をどのように考えているのか、「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」の費用はどの程度かかるのかという点も、教えてください。

「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」とはどのようなものか、「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」の弁護士がどのような活動をさせていただくのかについては、「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」の解説部分をご参照ください。

そのうえで、私たちは、「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」の弁護士が高齢者の方々を適切にサポートしていくためには、以下の3つの視点が重要だと考えています。

(1)トータルに支援する視点

高齢期に生ずる問題は、医療や介護の問題、住まいの問題、財産の管理の問題など様々です。「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」の弁護士は、あるトラブルの解決だけをお手伝いしたり、種々の問題について部分的に支援したりするのではなく、これらの問題についてトータルに支援することが必要であると考えています。

そのためには、高齢者の方々が、弁護士との間で、日頃より種々の問題について些細なことでも気軽に相談できる関係を築いておくことが重要であると考えています。

「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」は、かかりつけのお医者さんや会社の顧問弁護士のような存在であり、高齢者の方々が抱える問題についてトータルに支援していきます。

(2)継続的に支援する視点

弁護士は、トラブルが起きたときに必要な存在と思われがちですが、「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」の弁護士は、そもそもトラブルが起きないようにする、あるいは、仮にトラブルが起きても被害を最小限に食い止めるために、見守り等のサービスを通じて高齢者の方々を保護していきたいと考えています。

そのためには、日頃より高齢者の方々に寄り添い、継続的に支援をしていくことが重要となります。

また、継続的な支援をしていくことにより、元気で判断能力はあるものの財産管理等を自分一人で行うことに不安を感じて弁護士にアドバイスを求める段階、財産管理事務等の一部を弁護士に委任する段階、判断能力が衰えてきたために弁護士に財産管理事務等を全面的に委任する段階、自分が判断能力を喪失したときに備えて予め弁護士に任意後見人就任の依頼をしていたところ実際に判断能力を喪失したという段階、相続の段階などのあらゆる段階で、「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」の弁護士が、ご本人の望む、ご本人に最も適した支援を行うことが可能になります。

(3)福祉・医療専門職などとの連携の視点

高齢者の方々をトータルかつ継続的に支援するためには、法律問題だけではなく、福祉や医療の問題にも対応することが必要になりますが、弁護士だけで全ての問題に対応することは困難です。

そこで、「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)」の弁護士が活動するにあたっては、福祉や医療の専門職の方々等と連携をとることができる関係を築き、必要に応じて各専門職等が役割を分担して高齢者の方々を支援することができる体制を作ることが必要であると考えています。

「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)契約」は、以上の3つの視点に立って高齢者の方々を支援するための契約です。「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)契約」を結んでおけば、いつでも弁護士にお気軽にご相談ができ、弁護士から適切なアドバイスを受けることができます。
弁護士に様々なご相談をされる中で、財産管理を依頼したいとお考えになれば、ご本人の望む内容の財産管理契約を結ぶことができますし、遺言をしたいとのご希望があれば、ご本人の望む内容の遺言書作成を依頼することができます。もちろん、日頃の見守りや相談を内容とする「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)契約」だけで良いということであれば、他の契約を結ぶ必要はありません。

「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)契約」にかかる弁護士費用につきましては、個々のケースに応じて、弁護士との話し合いで決めていただくことになりますが、長期にわたる継続的な契約で、「パーソナルロイヤー(ライフサポート弁護士)契約」は、長期にわたり継続することが予定される契約で、主に個人の生活面の支援を目的とする契約であるため、無理のないご負担額にさせていただきたいと考えております。

興味を持たれた方は、当事務所にお気軽にご相談ください。

遺言書作成

私は、現在68歳で、妻と3人の子どもがおります。私は、若干の預貯金・株式と不動産を持っており、私の死後の財産の継承について自分なりの考えはあるのですが、妻は、病弱なこともあり、家計や私の財産についてあまり把握しておらず、3人の子ども達は皆独立して別に暮らしているため、私に万一のことがあると、私の財産の承継を巡り家族間で混乱が生ずるおそれがあります。私のようなケースだと、遺言を書くという方法があると聞きましたが、この点について教えてください。

遺言は、被相続人の最後の意思表示とも言われるもので、遺言書の作成は、あなたのご意向を相続人の方々に明確に伝える最善の方法であるといえます。
普通に行われる遺言には、自分自身で書いて自分の家などに保管しておく自筆証書遺言、自分自身で遺言を書いたうえで、その内容は秘密のままで公証役場の公証人の署名・押印をもらっておく秘密証書遺言、公証人に遺言書を作成してもらう公正証書遺言の3種類があります。

自筆証書遺言や、秘密証書遺言の場合、法律による厳格な方式が要求され、これを備えていないと遺言としての効力が認められないという危険があります。そこで、可能であれば、公正証書遺言をお勧めします。公正証書遺言をするには、証人2名の立会いが必要となり、費用もかかりますが(おおむね数万円程度)、公証人が遺言者の意向を確認しながら作成する点で、後日、紛争が生じても、遺言の効力が認められやすいといえますし、遺言書の家庭裁判所における検認の手続きも不要です。ただし、相続人や、その配偶者等は証人になれませんので、第三者の証人2名を確保する必要があります(弁護士が証人になることもできますので、遺言書の作成を含め、お気軽にご相談ください。)。

5年前に夫に先立たれ、夫の財産は、すべて私が受け継ぎました。私には子どもが3人(長男・長女・二男)おりますが、最近、それぞれの配偶者もからんで、兄弟仲が悪くなっており、このままだと、私の死後、私の遺産に関して兄弟間で争いが生ずるおそれがあります。自分としては、一緒に暮らしている長男に自宅の土地・建物と預貯金の一部を与え、長女には株を、二男には預貯金の残りを与えようと考えています。しかし、財産の分け方が必ずしも公平ではないので、そのような話を子ども達にすることは容易ではなく、また、今、話すことによって、子ども達から色々と文句を言われるのも嫌です。法定相続分と異なる内容の遺言をすることも可能だと聞いたことがありますが、この点について教えてください。

遺言をすれば、法定相続分(ご質問のケースだと3分の1ずつ。)と異なる割合で財産を取得させることが可能になります(より確実な遺言として、公正証書遺言をお勧めします。その詳細につきましては、Q1をご参照ください。)。

ご質問にある、あなたのご希望どおりの遺言もできますし、極端な例ですが、ある1人の相続人だけに全財産を相続させるという内容の遺言も有効です。

ただし、兄弟姉妹以外の相続人には、被相続人の財産から最低限確保できる遺留分(いりゅうぶん)というものが認められており、ご質問のケースであれば、お子さん方が相続人となるため、あなたの財産の2分の1は遺留分として確保され、それぞれ、その3分の1(法定相続分)に相当する額、つまり、あなたの財産の6分の1の相当する額については、各人とも、あなたの財産について遺留分が認められることになります。

このため、あなたが、前記のような極端な内容の遺言、つまり、ある1人の相続人だけに全財産を相続させるという内容の遺言をした場合は、遺言自体は有効ですが、この遺言に不満のある他の相続人(遺留分権利者)は、法定の期間内であれば、遺留分を保全するために遺留分侵害額請求権(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅうけん)という権利を行使することができます(相続の開始及び遺留分を侵害する遺贈等があったことを知った時から1年以内又は相続開始の時から10年以内の、いずれか早い時期までに行使する必要があります。)。遺留権利者が遺留分侵害額請求権を行使した場合は、結果的に、遺言どおりの分け方にならないというだけでなく、相続人間に無用の争いが生ずることにもなります。

したがいまして、遺言をされる場合は、法定相続分と異なる割合で財産を取得させる内容の遺言をすることは勿論可能ですが、各相続人の遺留分に配慮した内容の遺言をすることが重要となります。

任意後見制度

任意後見制度は、どのような手続で行いますか。

本人と、将来任意後見人になる者(任意後見受任者)との間で任意後見契約を結びます。この契約で、本人が任意後見人に委任する事項を定めます。この契約は、公正証書によって締結し、登記します。

本人の判断能力が低下した場合、本人、配偶者、4親等内の親族又は任意後見受任者が家庭裁判所に請求して任意後見監督人を選任します。任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が生じ、任意後見受任者は、正式に任意後見人となり、任意後見契約の内容に基づき、委任された事務を行います。

成年後見制度とどのような違いがありますか

成年後見制度は、判断能力が低下した後に審判により本人がすることができる行為を制限したり、後見人や保佐人に代理権を付与したりするものであり、その時点での本人の判断能力の程度に応じて必要な制度が選択され、代理権を与える事項や本人が単独でできない行為が決められます。これに対して、任意後見制度は、本人の判断能力に問題のない状態であっても、判断能力が低下した場合に備えて信頼できる人に予め委任することができるものであり、委任する事項、代理権を与える事項を、法律の範囲内で本人と受任者との間の契約で決めることができる点で、本人の意思の尊重に配慮した制度といえます。

他方、任意後見制度には、成年後見制度にあるような、本人が単独で行った行為を取り消すことができる規定がありません。したがって、本人は、その法的意味を理解できるだけの判断能力があれば、単独で契約を締結することができます。任意後見人も、これを取り消すことができません。

任意後見契約が登記されていても、任意後見監督人が選任された後でも、成年後見制度を行うことができ、成年後見制度が開始していても、任意後見契約が登記されていれば、任意後見監督人を選任し、任意後見契約を発効させることができますが、成年後見制度と任意後見制度は、同時に両方が行われることはないよう調整されることになっています。

このような点を踏まえ、本人の意思の尊重や本人の保護等の要請に鑑みて、適切な制度を検討することになります。

さらに詳しくお知りになりたいことがあれば、弁護士にお気軽にご相談ください。

成年後見制度

成年後見制度は、どのようにして本人の保護を図りますか

成年後見制度は、後見、保佐、補助の総称です。

後見の手続きでは、家庭裁判所が成年後見人を選任します。後見が開始すると、本人(成年被後見人)が行った契約などの法律行為は、取り消すことができます。ただし、日用品の購入など日常生活に関するものは、本人が単独で有効に行うことができます。成年後見人は、本人の財産に関して本人を代理して契約を結ぶなどの行為をすることができます。

保佐が開始すると、本人(被保佐人)は、借金をしたり、不動産等の重要な財産に関する契約をするなどの行為をするには家庭裁判所が選任した保佐人の同意が必要となり、この同意を得ずに行った行為は、取り消すことができます。一定の範囲の行為について保佐人に代理権を与えることもできます。

補助が開始すると、保佐の場合に同意が必要な行為の一部を本人(被補助人)がする場合に、家庭裁判所が選任した補助人の同意が必要となります。

さらに、詳しくお知りになりたいことがあれば、弁護士にお気軽にご相談ください。

成年後見は、どのような手続によってなされますか

判断能力が低下して、後見が必要になった場合は、家庭裁判所に後見開始の審判の申立てをします。家庭裁判所は、本人の精神状況について鑑定を行ったり、本人等の意見を聞くなどして後見開始の審判をし、成年後見人を選任します。

後見開始の審判の申立てをすることができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官です。

保佐や補助も概ね同様ですが、補助開始の審判には、後見の場合と異なり、本人の同意が必要です。

さらに、詳しくお知りになりたいことがあれば、弁護士にお気軽にご相談ください。

消費者被害

クーリングオフ

クーリングオフをするには何か理由がないといけないのでしょうか。

何も理由は要りません。

クーリングオフに期間制限はありますか。

あります。例えば訪問販売の場合、申込書面や契約書面など、契約の内容を記載した書面の交付が消費者になされた日から計算して、8日間以内に、通知を発信しなければなりません。

クーリングオフをした場合、事業者に解約手数料を支払わなければなりませんか。また、支払ったお金は戻ってきますか。

クーリングオフをその決められた期間内に発信すれば、発信した時点で、契約は最初からなかったものになります。したがって、事業者は解約手数料等の一切の 金銭の請求をすることができませんし、消費者がすでに支払ったお金があれば全額戻ってきます。消費者が受け取った商品は、事業者の費用負担で返品ができます。

振込め詐欺

振込め詐欺の具体的な手口を教えてください。

「オレだよ、オレ。」などと、息子や孫等の家族を装い、突然電話をかけてきて、電話に出た方が「○○かい?」などと名前を確認すると、「うん、○○だけど、交通事故を起こしてお金が必要になったから、すぐにお金を振り込んでほしい。」などと言って、銀行等の口座に現金を振り込ませようとします。

お金が必要な理由の典型的な例としては、交通事故のほかに、「借金の返済」、「友人の借金の保証人になった。」、「会社のお金を横領してしまった。」、「女性を妊娠させてしまった。」など様々です。

振込め詐欺の手口は、より複雑・巧妙に進化しており、特に高齢者の方は注意が必要です。

振込め詐欺に引っ掛かってしまい、お金を指定された銀行口座に振り込んでしまいました。お金を返してもらうことはできますか。

法律上、お金をだまし取られた人は、詐欺を行った者から、そのお金を返してもらうことが可能です。

しかし、通常の場合、詐欺を行った者が任意にお金を返却してくれることはありませんし、詐欺を行った者はすぐに行方をくらまし連絡をとることすら難しくなることが多いので、一度、お金をだまし取られてしまうと、そのお金を実際に回収することは困難になります。

振り込んでしまったお金を保全する方法はありませんか。

詐欺被害にあったことに気づいたら、速やかに、振り込んだ預金口座を凍結する手続をとることが重要です。
振り込んだ預金口座のある金融機関に対して、すぐに連絡をしてください。

架空請求

架空請求に対しては、どのような対応をすべきですか。

請求書には「回収のため自宅へ出向く。」、「強制執行をする。」などの脅し文句が書いてあることが多いため、身に覚えがないにもかかわらず支払ってしまったり、問い合わせのため相手方業者に連絡をとりたくなることもあろうかと思います。しかし、架空請求は、不安な気持ちに付け込む手口の詐欺ですから、支払ったり、問い合わせの連絡をしたりせずに放置するのが一番の対処法です。

もしも、不安な場合には、弁護士に相談するのが良いでしょう。あなたの方から、請求者に対して、直接問い合わせをすることは、あなた自身の個人情報を相手に知られてしまう等の危険がありますので、控えるべきです。また、請求が悪質な場合には、警察に届け出ておきましょう。

身に覚えのない書類が裁判所から届きました。これも架空請求なのでしょうか。

架空請求者は、さまざまな名前をかたって請求してきます。時には、弁護士事務所や実在する公的機関、それによく似た名称を名乗るものもあります。

もっとも、裁判所から送られてくる書面は、「訴状」や「支払督促」といった、正式な法的手続に関するものである場合があり、そのまま放置すると、あなたに不利益な結果が生じる可能性がありますので、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。

証券被害

具体的に、証券会社のどのような勧誘が問題になるのでしょうか。

典型的なものとしては、①商品のリスクを説明しないで、その商品の有利性のみを強調して勧誘するケース、②価格が変動する商品について、断定的に「価格があがる。」とか「必ず儲かる。」などとして勧誘するケース、③投資家の投資目的、資産状況、投資経験等に適合しない取引を勧誘するケースなどがあります。

証券会社から、証券投資は、投資家が自分の判断で行ったものであるから、それで損失が生じたとしても、投資した者の自己責任であるなどと言われました。証券会社には何の責任もないのでしょうか。

証券取引の対象となる商品は、抽象的な権利であり、その内容も多岐にわたり、複雑であることが多いことから、一般投資家にとっては、大変わかりにくいものです。このため、証券会社が一般投資家の自己責任を問うためには、知識や情報もある証券会社の側で一般投資家に対して十分な説明義務を尽くし、自己責任を問えるだけの判断材料を提供する必要があります。

したがって、具体的事情にもよりますが、証券会社の勧誘方法に問題がある場合等には、証券会社に対し説明義務違反などの責任を問えることがあります。

未公開株商法とは何ですか。

未公開株商法とは、取引所に上場されていない株式(未公開株)について、「上場間近です。」、「近い将来、確実に値上がりします。」などと偽りの勧誘をして、高額な未公開株を購入させる商法です。

いつまで経っても株の上場がされないことを不審に思って、購入者が販売業者に問い合わせても、販売業者はさまざまな理由をつけて購入者を納得させ、さらに株の購入を重ねさせて、被害が拡大することがあります。その後、販売業者が廃業するなどして全く連絡がとれなくなることが多いようです。

未公開株商法については、販売業者に対し、一旦代金を支払ってしまうと、その後の被害回復が困難になりますので、よく注意する必要があります。

刑事・少年事件

刑事事件

国選弁護人とはどういう人?

国選弁護人は、資力がないなど一定の要件を満たす被疑者・被告人の弁護のために、国が選任する弁護人です。国選弁護人は、無罪判決を得るための方策を考えたり、被疑者・被告人に代わり被害弁償をしたり、被害者と示談をしたりするなど、被疑者・被告人のために活動をします。国選弁護人に対する報酬は国(法テラス)から支払われるため、被疑者・被告人自身は、多くの場合、弁護費用の負担を免れます。

国選弁護人と私選弁護人との違いは?

国が選ぶか(国選)、被疑者・被告人ないしその関係者が選ぶか(私選)の違いはありますが、どちらも被疑者・被告人の権利・利益を守るために最善の弁護活動をすべきであるという点で違いはありません。もっとも、国選弁護人が選任されるのは、勾留された後であり、逮捕段階では選任されないので、逮捕段階や逮捕前の段階で弁護を依頼したいという方のニーズに応えることはできません。この点、私選弁護人であれば、逮捕段階や逮捕前の段階においても選任することができますので、依頼者の逮捕・勾留その他の不利益を防ぐための弁護活動をすることが可能です。
また、国選弁護人の選任は、原則として1人しか選任が認められていませんが、私選弁護人であれば、被疑者段階では3人まで、被告人段階では原則として人数の制限なく選任が認められていますので、マンパワーを発揮した機動的な弁護活動が可能です。

起訴と不起訴の分かれ目は?

起訴するか否かは検察官の裁量に任されているため、明確な基準というものはありませんが、一般的に、嫌疑が十分か否か、被害弁償の有無、被害者との示談の有無、過去の犯罪経歴、反省の態度等が考慮されているようです。

実刑と執行猶予の分かれ目は?

実刑か執行猶予かは、様々な事情を総合的に考慮して、最終的に裁判官が決めるため、明確な判断基準というものはありませんが、過去の裁判例の傾向からすると、犯罪自体の重大性、犯罪に関する情状の軽重、被害弁償の有無、被害者との示談の有無、前科の有無等が考慮されているようです。

保釈は必ず認められるの?

必ず認められるものではありません。法律上、被告人に罪証隠滅(証拠を破壊したり、隠匿したりすること)や証人威迫(証人を脅したりすること)等のおそれがない場合には保釈を許さなければならないとされています(刑事訴訟法89条)。しかしながら、裁判所は、罪証隠滅のおそれを理由として保釈請求を却下するケースが多く、司法統計によれば、地方裁判所による保釈許可率は、近年は50パーセント前後で推移しているようです。

少年事件

少年事件でも国選弁護人は付くの?

少年が逮捕・勾留されれば、成人の場合と同様に、一定の要件を満たせば国選弁護人が選任されますが、少年が家庭裁判所に送致された後はその資格を失います。さらに、国選付添人(成人の場合の国選弁護人)は、一定の重大犯罪を犯した少年についてのみ選任されるので、少年事件においては、私選で付添人を選任する必要が出てくるケースが多くなります。なお、資力が乏しい場合には、弁護士会と日本司法支援センター(法テラス)とが協力して行っている「少年保護事件付添援助制度」を利用することができるため、この制度を利用して、弁護士費用の負担をせずに付添人を付けられるケースがあります。

付添人はどのような活動をしてくれるの?

非行事実そのものを争う活動をしたり、被害者がいる事件では、被害者に被害弁償し、示談できるよう努力したり、環境調整をしたりします。また、少年事件では、家庭裁判所の調査官、少年鑑別所の技官その他の関係者の意見が重視されますので、必要に応じて学校の先生との面談や調査官や技官との面接も重ねながら、少年の福祉や更生のために必要な活動をいたします。

少年審判では、どのような処分がされるの?

少年審判については、審判不開始や不処分となることがあります。少年の保護処分には、①保護観察、②児童自立支援施設・児童養護施設送致、③少年院送致、④試験観察があります。
① 保護観察:保護司の指導・監督に服し、定期的な報告義務がありますが、従来どおり自宅で生活することができます。
② 児童自立支援施設・児童養護施設送致:親の十分な監護が期待できない場合に、適当な施設に入所させ、少年の社会復帰を促します。
③ 少年院送致:親の十分な監護が期待できず、少年の非行が進んでいる場合には、少年院に入所させ、少年の更生を促します。
④ 試験観察:少年の様子をしばらく観察してから最終的な処分を決定する方法で、親元に帰される場合と施設に預けられる場合とがあります。

少年であっても大人と同様に法廷で裁判されることがあるの?

少年事件の場合、原則として全ての事件が家庭裁判所に送致されますが、一定の重大な犯罪等を犯した場合には、家庭裁判所から検察庁に事件が送り返され(逆送事件)、送り返された事件については、検察庁は原則として起訴すべき義務を負います。検察官による起訴後は成人の場合と同様、公開の法廷で刑事事件の裁判を受けることになります。

震災・原発被害

震災被害

今回の震災で、隣家の塀が倒れ、私の家の駐車場に停めてあった車が損傷しました。塀の所有者である隣人に、損害の賠償を請求した場合、認められるでしょうか。

今回の震災では、福島県内の多数の建造物に被害が出たため、こうしたことでトラブルになっているケースも多かったようです。

一般に、土地上に人工的に設置された物の「設置又は保存」に欠陥(瑕疵)があったため、他人に損害が生じた場合、その工作物を管理していた者(占有者)ないし工作物の持ち主(所有者)は、損害を賠償しなくてはなりません(民法717条1項)。

ご質問のケースでは、隣家に住む隣人の所有する隣家の塀が倒れたようですので、塀の「設置又は保存」に欠陥(瑕疵)があれば、あなたの隣人に対する損害賠償請求は認められる可能性があります。

もっとも、塀の「設置又は保存」に欠陥(瑕疵)があるかどうかについては、簡単には判断できません。

欠陥(瑕疵)とは、その種の工作物として通常備えるべき安全性を欠いている状態を指していると考えられていますが、今回の震災のように、非常に広い範囲で強い揺れを生じた地震では、欠陥のない工作物であっても壊れる可能性があります。

したがって、塀の「設置又は保存」に欠陥があったかどうかについては、争いになると、最終的には裁判所の判断を待たなくてはならない可能性もあります。

今回の震災によって発生した津波により親族が行方不明となりました。行方不明の親族の財産を誰がどのように管理したらよいのか分かりません。どうしたらよいでしょうか。

本人が住所地を離れて行方不明となった場合(不在者)であっても、法律上当然、不在者の財産を管理する権限のある者(親権者や後見人など)がある場合は、その者が財産の管理を行うことになります。

これに対して、不在者の財産を管理する法律上の権限のある者がいない場合、家庭裁判所は利害関係人又は検察官の請求により財産の管理について必要な処分(配偶者を不在者財産管理人の選任する等)を命ずることができます(民法25条~29条)。

借家に住んでいますが、棚の上に置いていた物が震災で落ちて床に傷がつきました。修繕費を払わなくてはならないでしょうか。

置き方が適切であったかどうか等の具体的な状況によって異なりますが、置き方が不安定で、簡単に落ちて床を傷付ける状態であった等の事情がなければ、賠償責任を負わない可能性があります。

通常、賃貸借では、借り主が通常の使い方をしていても発生すると考えられる損耗・毀損は貸し主の負担とされています。

ご質問のケースでは、物の置き方がどのようであったか不明ですが、置き方が適切であったにもかかわらず、地震によって床に物が落ちたという場合は、「借り主が通常の使い方をしていても発生すると考えられる損耗・毀損」として、借り主は賠償責任を負わない可能性があります。

分譲マンションに住んでいます。地震で上の部屋の配管に損傷が生じたらしく、水道が回復したところ階下にある私の部屋に水漏れが生じました。賠償責任を請求して認められるでしょうか。

地震前から配管が老朽化しており、配管として本来備わるべき安全性を備えていなかったという場合には、配管の占有者または所有者への損害賠償請求が認められる可能性があります。これに対して、配管が本来備えるべき安全性を有していたにもかかわらず、激しい地震により損傷が生じたという場合には、損害賠償請求は認められません。

震災による隣人とのトラブルを解決したいのですが、どのような制度を利用したらよいでしょうか。

まずは訴訟制度の利用が考えられますが、隣人とのトラブルの場合、話し合いによる柔軟な解決が結果的に双方にとって好ましい結果となることもありますので、簡易裁判所の調停や弁護士会の原子力発電所事故被害者救済支援センター手続(ADR)のような、第三者に間に入ってもらって話し合いによる解決を目指す手続の利用も検討してよいと思われます。

原発被害

東京電力への損害賠償請求では、どのような損害が賠償されるのですか。

原発事故と相当因果関係のある損害が賠償されます。具体的には、社会通念上、今回の原発事故から生じたと考えるのが合理的かつ相当と判断される損害が賠償の対象となります。

避難区域内に自宅がありましたが、東日本大震災で発生した津波により全壊・流出しました。自宅の賠償を東京電力に求めることはできますか。

賠償が認められるのは難しいと思います。ご相談のケースでは、自宅の全壊・流出は津波によって生じていますので、原発事故がなかったとしても被害の発生は避けられず、原発事故によって生じた損害ということは難しいと思われます。

東京電力への損害賠償請求に時効はありますか。

不法行為による損害賠償請求権の時効は、損害及び加害者を知ったときから3年で時効消滅することとされていましたが、平成25年12月11日に「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律」(原賠時効特例法)が公布・施行され、今回の事故に関する原子力損害賠償請求の消滅時効期間については「10年間」となり、民法724条で「不法行為の時から20年」とされているいわゆる徐斥期間については、「損害が生じた時から20年」となっています。

避難に伴って家具を購入しました。東京電力に家具の購入費用を請求したいのですが、領収書を捨ててしまいました。領収書がないと請求することはできないでしょうか

領収書がない場合でも、購入した家具の写真や、購入日時・購入店等を記録・保存しておくと請求が認められる可能性もあります。諦めずに弁護士とよく相談してください。

どのような損害が賠償されますか。

既に多くの方々が請求されているので、ご存知の方も多いと思いますが、国の機関である原子力損害賠償紛争解決審査会が発表した中間指針(以下、単に「中間指針」といいます。)では、避難区域の方々について、少なくとも以下の損害が賠償されるとしています。ただし、財産価値の喪失又は減少については、未だ十分な賠償は行われておらず、今後本格的に賠償が始まる予定です。

  1. 避難、一時立入、帰宅費用
  2. 検査費用(人)
  3. 生命・身体的損害
  4. 精神的損害
  5. 財産価値の喪失又は減少等
  6. 営業損害
  7. 就労不能等に伴う損害
  8. 検査費用(物)

中間指針で対象とされていない損害は賠償の対象とはならないのですか。

中間指針では、中間指針で対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないわけではなく、個別具体的な事情に応じて認められることがあるとされています。

ただし、具体的にどのような事情が認められれば賠償が認められるのかについては、未だ明確な基準はありません。

なお、避難者と東京電力との話し合いを仲介している原子力損害賠償紛争解決センター(文部科学省)では統括基準という基準を定め、例えば要介護状態にある避難者である場合や、身体または精神の障害がある、妊娠中である、家族の別離、二重生活が生じた等の事情が認められる場合には慰謝料を増額すべきと東京電力に提案しているようであり、東京電力でもこうした提案に応じ、慰謝料を増額して支払っているようです。詳しくは原子力損害賠償紛争解決センターのホームページ「統括基準について」でご確認ください。

避難区域内の財物損害の賠償については何も決まっていないのですか。

原子力損害賠償紛争解決センターの統括基準では、動産(製造業の機械・機具などの生産設備、卸小売業・サービス業などその他の事業者の事業用設備、住宅の家財等)であって避難等対象区域内に存在するもの、及び避難区域内の不動産については、①避難等を余儀なくされたことに伴い管理が不能等となったため、価値の全部又は一部が失われた場合における価値の喪失又は減少分及びこれらに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用、②その価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合における価値の喪失又は減少分及びこれらに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用、③財物の種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われた場合における価値の喪失分又は減少分及びこれらに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用について、被害物の現状等が確認できない場合であっても、速やかに賠償すべき損害であるとしています(詳しくは原子力損害賠償紛争解決センターのホームページ「統括基準について」を参照ください。)。したがって、避難区域内の財物損害については、原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介の申立を行うことにより、早期の賠償が得られる可能性があります。

どのような損害が賠償されますか。

事業者の方については、少なくとも風評被害(放射性物質による汚染の危険性を懸念して敬遠したくなる心理が平均的・一般的な人を基準に合理的な場合に生ずる営業損害や就労不能等に伴う損害、検査費用(物)など)と間接被害(1次被害者との関係で、取引に代替性がない場合(事業の性質上、販売先又は調達先が地域的に限定されている事業で必然的に生じたもの)に生じた営業損害)が賠償されます。

また、原子力損害賠償紛争解決センターでは、自主的避難者についても一定の範囲で賠償がなされるべきであるとしています(詳しくは原子力損害賠償紛争解決センターのホームページ「統括基準について」を参照ください。)。

自主的避難者については、どのような損害が賠償されるのですか。

原子力損害賠償紛争解決センターの統括基準では、自主的避難の実行に伴い支出した実費等の損害額が既払い金を上回る場合において、①自主的避難を実行したグループに子ども又は妊婦が含まれていたかどうか、②自主的避難を開始及び継続した時期、③放射線量に関する情報の有無及び情報の内容、④実費等の具体的内容、額及び発生時期などの要素を総合考慮して、損害の有無を判断するとしています。

したがって、これに該当する自主的避難者の方は、原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介を申し立てることで早期に賠償が受けられる可能性があります。

賠償対象となるべき実費等の損害としては、①避難費用及び帰宅費用、②一時帰宅費用、分離した家族内における相互の訪問費用、③営業損害、就労不能損害、④財物価値の喪失・減少(自主的避難による管理不能等に起因するもの)等が挙げられています。

その他

民事介入暴力事件

当社は、未だ暴力団関係者が会社に押しかけくるというような経験をしたことがないため、そのような場合の対処法がわかりません。そこで、基本的な心構えについて、アドバイスしてください。

暴力団関係者と応対するうえで最も重要なことは、毅然とした態度を堅持することです。

暴力団員は、刑務所入りの危険を十分認識しながら、資金獲得のために企業等を訪れているのですから、直接的な暴行、傷害を加えることはまれです。したがって、必要以上に恐れる必要はありません。ただし、相手は、脅しのプロですから決して侮ってはいけません。 暴力団関係者は、強い者には弱く、弱い者には限りなく強い態度をとるので、暴力団には屈しないという強い信念と、対決する気迫を持って折衝に当たることが大切です。

暴力団関係者は、相手を挑発して失言を誘い、あるいは言葉尻をとらえて徹底的に糾弾し、無理難題を押しつけてきますので、挑発に乗らずに冷静に対応することが大切です。また、暴力団関係者は、一般市民に馬鹿にされたり、なめられたりしたと思ったときは、「メンツをつぶされた。」などとして、場合によっては直接的な暴力行為に及ぶことがありますので、彼らを挑発することは危険です。

さらに具体的な対処方法を知りたい、日頃よりこのような事態に備えて常時弁護士に相談できる体制を作っておきたい、不当要求に対する対処方法等について継続的に弁護士のアドバイスを受けたい、といったご要望がある場合は、弁護士と顧問契約を結んで、顧問弁護士を確保することをお勧めいたします。

暴力団関係者が会社に押しかけきた場合の受付時の対応について教えてください。応対の要領について教えてください。

受付時(具体的な面談に入る前)に、相手方の氏名(フルネーム)、所属団体、所在地、電話番号及び用件等を確認しましょう。

また、年齢、人相、着衣、身体的特徴、言葉の訛り、携行品、自動車のナンバー・車種・塗色等をメモなどに記録しておくことも有用です。この記録については、面談時に面談担当者以外の方がじっくり観察して行うという方法もあります。

暴力団関係者が会社に押しかけきた場合、どのような場所で面談すればよいか教えてください。

相手方と面談する場合、応対者に有利な場所で、精神的に余裕をもって応対できる場所を選んでください。

具体的には、会社等の管理が及ぶ範囲内の場所等(例えば、暴追ポスターや不当要求防止責任者講習の「受講修了書」を掲示した社内応接室、社内電話がある部屋、大声を出せばすぐに社員にわかるような部屋等)で行うべきであり、相手からの呼出しには応じない、とくに暴力団事務所には絶対に出向かないようにしてください。やむを得ず外で面談する場合は、ホテルのロビー等、人目につく公共の場所を選んでください。

配置は、こちら側が入口に近い場所になるようにしてください。面談場所に相手方を入れる前に、凶器になるものが置いてないか確認してください。また、相手方を面談場所に入れた後、面談を開始した際にも再度確認してください。

暴力団関係者が会社に押しかけきて、「社長を出せ。」と言ってきた場合、どのような対応をすればよいか教えてください。

面談や電話は、責任者として選任された担当者が統一して行い、トップまたはそれに近い幹部は出さないようにしてください。

暴力団は、「責任者を出せ。」、「社長に会わせろ。」などと要求してくる場合が多いのですが、最初からトップが応対する必要はありません。「私が担当責任者です。お話を承ります。」と、決められた責任者が応対するのがよいでしょう。

責任者の選任にあたっては、正義感の強い明確な意思表示のできる責任者を予め決めておくことが重要であり、次のような方を選任されるとよいでしょう。

① 暴力団対策に関する講習を受講された方

② 上記の方から指導を受け、必要な知識等を身につけている方

③ 企業内のトラブル処理の任に当たっている方

また、応対担当者を複数決めておき、それぞれに合った任務分担も話し合っておきましょう。例えば、実際に相手方と会話をする方、相手方の年齢、人相、着衣、身体的特徴、言葉の訛り、携行品、使用車両等、相手方の特定に役立つ事項や面談内容をメモする方、関係者との連絡を担当する方、警察への通報を担当する方等を予め決めておくことが重要です。

暴力団関係者の要求に応じて会社で面談する場合、面談時間や人数を制限した方がよいでしょうか。

面談時間は予め明確に区切り(例えば「何時には○○がありますから何時までならお話をうかがいます。」などと告げて応対の時間を明確に区切る。)、応対時間は可能な限り短くします(長くても30分以内)。

また、長引く場合に備えて、社内から内線電話などを入れてもらうよう予め打ち合わせをしておいてください。

さらに、相手方が多人数の場合は人数制限(1人か2人。少ないほどよい。)を行い、多人数での面談を強要する場合には面談をしないようにしてください。

暴力団関係者の要求に応じて会社で面談する場合、こちら側で対応する人数についてアドバイスしてください。

不当要求防止責任者は、常に優位に立って応対しなければなりませんが、暴力団員は脅しのプロですから、1人で応対すると彼らのペースに引き込まれ、不利な応対を余儀なくされることもあります。

相手方の要求内容を正確に把握し、不測の事態に対処し、かつ、相手方との関係で数的な優位を保つため、前記のとおり相手方の人数を極力少数に制限したうえ、必ず2名以上(相手方より多数)で役割分担を決めて対応してください。

応対担当者が面談中、その他の者は、社内応接室等のドア越しにそれとなく中の様子をうかがう等して緊急事態に備えてください。

暴力団関係者の要求に応じて会社で面談する場合、相手にお茶を出した方がよいでしょうか。

お茶等を出すことは暴力団員が居座り続けることを容認したことになりかねないし、湯飲み茶碗等を壁に投げ付けられるなど、脅しの道具として使用されるおそれもありますので、お茶等の接待はしないでください。

暴力団関係者の要求に応じて会社で面談する場合、どのような点に注意して相手の話を聞けばよいか教えてください。

相手方は脅しのプロなので、些細なことに因縁をつけられないよう、まず相手側の話をよく聞き、趣旨・目的をハッキリさせてから対応してください(暴力団員が、何をネタに、どんな理由で、何をたくらんでいるのかを確認することが重要です。)。さらに、面談開始時に「何時まで」と断らなかった場合は、用件を確認した段階で、長くても30分の範囲内で、用件に応じた制限時間(極力短い方がよい。)を予め相手方に伝えてください(例えば、そのようなご用件であれば、○○時まで、お話をうかがいます。」等)。

彼らは、脅迫罪や恐喝罪を避けるため、「誠意を見せろ。」等とあいまいな表現をしますが、具体的に相手は何を求めているか、要求の本音は何か、具体的にはどうすればよいのかということを相手の口から言わせて、要求を明確にさせる必要があります。暴力団員は金が目当てなのですが、こちらから金銭での解決を投げかけてはいけません。恐喝罪にならないよう、「金を要求したわけではないのに、相手が金で解決してくれと言った。」と言い訳をされてしまいます。

また、用件によっては、応対者や応対方法が異なる可能性がありますので、いずれにせよ十分な確認をしましょう。

なお、用件を確認した段階で、暴力団員が別人の代理人として来訪したことが判明した場合、直ちに委任の事実を確認する(委任状を出してもらい十分確認する等。)ことも大切です。

暴力団関係者の要求に応じて会社で面談する場合、こちら側の言動で注意しなければならない点について教えてください。

相手が暴力団関係者ともなれば、何もしなくてもただ居るだけで怖い…というのが現実だと思いますが、その場から逃れたいという気持ちから、相手の一方的な要求に安易に応じたり、約束したりするようでは、企業としての姿勢が疑われます。

相手は、「子供の使いじゃない。」などと凄むでしょうが、ビクついたりせずに、強い信念と気迫を持ちつつ、落ち着いて対応しましょう。早く暴力団員との関係を絶ちたいという気持ちは分かりますが、無理に解決を急いではいけません。彼らは、結果を出したいわけですから、一刻も早く要求を呑ませたいのです。それに便乗して、解決を急ごうとすれば、彼らの思惑どおりになってしまいます。

暴力団員は、巧みに論争を持ち込んで、相手の失言を誘い、また、言葉尻をとらえて厳しく糾弾して要求に従わせようとしますので、相手の言うことに関し、議論をすることを避け、不用意な発言をしないように細心の注意を払い、発言を必要最小限にとどめることが肝要です。

面談当初の段階から「申し訳ありません。」、「すみません」などと、こちら側の非を認めるような発言をしたり、揚げ足を取られるような発言(例えば、会話の流れの中の「責任をもって○○します。」などと発言をすると、後で無関係のことまで「さっき責任を持つと言っただろう。」などと言われることがあります。)をしたり、ミスや落ち度が明確でないのに、こちら側に一方的に非があるような謝罪の発言をしたりするようなことは避けてください(もし、誤った発言をしてしまった場合は、その場において速やかに訂正してください。)。

とくに、相手方の指摘する事実が真実であれば、こちらにも非があるかもしれないが詳細は不明というようなケースの場合、相手方に対し謝罪や金銭賠償等をしなければならないのではないかと不安な気持ちになり、十分な調査をしないまま謝罪をしてしまうことがありますが、調査をしてみなければ指摘された事実やその事実についての責任の所在等が判明しない場合は、安易に謝罪をせずに、調査結果に基づき応対する旨を明確に伝えましょう。

仮に、こちら側にも一定の落ち度があるような場合(相手方の言っている内容自体に一部正当な要求が含まれているような場合)でも、法律上負担すべき義務は、実費弁償等、社会通念上相当な範囲内の損害賠償義務にとどまり、かつ、その義務は、ほぼ例外なく相手方の考えている詫び料等より、はるかに低額なものなのであり、また、正当な内容が含まれる要求であっても、要求手段や方法が社会的に相当な範囲を逸脱している場合には、要求行為自体が強迫罪、強要罪、恐喝罪を構成することがありますので、やはり安易な謝罪や約束は絶対にしないでください。やむを得ず謝罪をする場合も「○○の事実については、お詫び申し上げます。」等、特定の事実に限定して謝罪をしてください。また、謝罪をした際に、相手方から「謝って済むと思うのか。誠意がない。」などと言われた場合、こちら側で既に賠償額を明確に定めているような場合は、その賠償額を支払うことのみを伝えるべきですし、定まっていない場合は「裁判所で認められる法的責任がある場合は、その範囲で対応します。」などと答えるしかありません。さらに、相手方が「誠意がない。」などと言ってきても、こちらから金銭賠償の提案はせずに「裁判所を通して具体的なご請求があれば、こちらも顧問弁護士等と相談して対応いたします。」などと答えてください。 また、その日の面談における相手方の話を聞いただけで要求に応じられない内容であることが明らかなときは(ほとんどの場合、応ずるべきではない。)、明確に拒否してください。不当な要求に対してのあいまいな返事は危険です。 世間の評判や関係者の名誉等を優先して水面下で解決したり、安易な妥協をしたりすると、いわば「良いカモ」とされ、後々まで酷い思いをする結果となるので、例えば、「当社の方針(あるいは業界等の方針でも可)として、そのような要求には一切応じないことになっています。お断りいたします。お引き取りください。」などと言ってキッパリと断り、付け入るすきを与えないことが肝要です。

暴力団の追及に対する回答に窮した揚げ句に、前記のとおり「申し訳ありません。」などと自己の非を認める発言をしたり、「検討します。」、「考えてみます。」などと相手に期待を持たせる発言をしたり、再び訪問される口実となるような言動をすることは厳に謹んでください。

暴力団関係者との面談において、相手方から「一筆書けば何もしないから。」などと言われた場合、これに応じて署名等をしても大丈夫でしょうか。

理由なき書類(詫び状、念書等)は作成せず、署名・押印もしないことが重要です。

暴力団は「一筆書けば許してやる。」などと言って、詫び状や念書等を書かせようとすることが多いのですが、これに応ずると、後日、「お前のところも非を認めて詫び状を書いているのだろう。」などとその書類を盾に金品の要求をしてきます。したがって、理由なき書類を作成したり、安易に名刺に署名・押印したり、暴力団員が持ってきた書類に署名・押印するなどの行為は絶対に禁物です。

暴力団員は「ここに来たことを上の者に報告するので、お前の名前の名刺の裏に判を押せ。」などと全く義務のない話を持ちかけ、あとで要求を認めたと主張したり、悪用したりします。

また、暴力団等が社会運動に名を借りて署名を集めることがありますが、これに署名すると、これを持って署名者が属する会社の他の支店や関連企業等を訪問するなどして賛助金集めの道具に使われかねません。

暴力団関係者との面談において、メモなどはとった方がよいでしょうか。また、メモをとることに文句をつけられた場合、どうすればよいでしょうか。

暴力団員等との電話、面談による応対内容は、犯罪検挙、行政処分、民事訴訟等に不可欠ですので、確実にメモ、録音、録画し、記録化しておくことが必要です(モニターカメラがあれば一部始終を録画するようにしてください。)。

メモしていることが相手方に分かるのは当然ですが、録音についても、事前に相手方に告げて公然と録音をすることが相手方をけん制するうえで効果的です。たとえ相手が拒否しても「内容を上司に正しく報告する必要があります。」などと告げて録音を励行してください(録音については、相手の言葉はもちろんのこと、当方の言葉も全部入りますので、発言には十分注意してください。)。

暴力団員は不利になると「証拠でもあるのか。」、「言った覚えはない。」などと平気でシラをきりますから、必ず証拠を残しましょう。

記録された資料は、後日、事件として発展した場合の重要な証明資料にもなりますので、大切に保管してください。

応対担当者が面談中、その他の者は、相手方の自動車のナンバーを控える等、できる限り相手方のデータを収集するよう努めてください。

暴力団関係者との面談において、相手方が怒って乱暴な態度に出た場合、どうすればよいでしょうか。

暴力団員が不法行為に及んだときは直ちに110番することが肝要です。

この場合、不要なトラブルを避け、受傷事故を防止するためには、暴力団員に気付かれないように通報することが必要です。もし、暴力団員に気付かれて「なぜ警察を呼んだ。」などと言い掛かりを付けられた場合には、「警察からそのように指導を受けています。」と答えるなど毅然とした態度を取ることが大切です。

なお、こちら側にも非があるような場合、その事実には、できれば警察にも知られずに解決したい気持ちになることもあるでしょうが、隠さず明らかにして相談する勇気を持ち、正しい対処方法で事態を早めに小さく処理しましょう。

暴力団関係者との面談を短時間で打ち切る方法についてアドバイスしてください。

応対は必要最小限にして打ち切ることが重要で、用件にもよりますが、面談当初に相手方に告げた面談時間を経過したとき、そうでない場合は用件を確認したうえで自分なりに決めた時間を経過したときは(いずれにしても30分以内)、「予定の時間が過ぎましたのでお引き取りください。」、「本日は会議がありますので、あと5分で終了させていただきます。」、「時間になりましたので、お引き取りください。」とか、「これ以上お話しても当方の考えは変わりませんのでお引き取りください。」などと明確に告げて退去を求めてください。

また、長引く場合に備えて予め社内から内線電話などを入れてもらうよう打ち合わせをした場合は、実際に電話をもらったのをきっかけにして、面談を打ち切ってください。

「お引き取りください。」、あるいは「お帰りください。」とはっきり意思表示をしたにもかかわらず、相手方が、居座って退去しない場合は、少し間隔を置いて「お帰りいただけなければ警察に連絡します。」と告げてください。それでもなお退去しない場合は、少しの間隔を置きながら3回ほど同じことを告げてください。それでも退去しなければ刑法上の不退去罪を構成するといえるので、110番通報してください。

なかなか容易なことではないかもしれませんが、「対応時間は短く、判断は慌てずに。」という考え方で対応してください。

暴力団関係者との面談終了時に、相手方から「お前が拒否しても俺は納得しない。もう一度社長と相談して、必ず電話をよこせ。」と言われたのですが、相手方の要求に応じて電話をしてもよいかアドバイスしてください。

面談終了後は、特別な事情がない限り、こちら側から相手方に電話を入れるなどして連絡をとることは、相手方に対し付け入る隙を与えるだけなので、連絡等はしないようにしましょう。

医療事故

私の父は、現在62歳ですが、先日、工場での作業中に誤って機械で目を傷付けてしまい、医師の診療を受けたのですが、目に注射のようなものをされた後、間もなく失明してしまいました。この点について、担当医師に説明を求めたところ、医師から、診療前の父の状態、治療方法、加療後の父の状態については、難しい言葉でよく理解できない部分もありましたが、一応の説明を受けました。しかし、父が何故失明したのか、注射のようなものを用いた治療と父が失明してしまったこととがどのように関係するのかなどが、一切わからないため、父も私たち家族も苦しんでいます。つい最近、改めて担当医師と面談して説明を求めたのですが、以前よりも私たちを警戒するような態度で、治療行為に問題があったから父が失明したとはいえないなどと言われ、早々に面談を打ち切られてしまいました。父や私たち家族としては、医師に責任をとってほしい(例えば、お金を払ってほしい。)というよりも、真実を知りたい、もし医療行為に問題があったのであればきちんと説明したうえで誠実に謝ってほしい、というような当たり前の要望をしているだけなのですが・・・。このような場合、これからどのようにしたらよろしいか教えてください。

医師ないし医療機関に対し、ご質問にあるようなお父様やあなたの率直なお気持ち、つまり、責任をとってほしいというよりも真実を知りたい、もし医師の医療行為に何らかの問題があったのであれば誠実に謝ってほしい、とのお気持ちを記載した文書を作成し、そのお気持ちを明確に伝えることは、なさってよいのではないかと思います。

ただ、ご質問の状況であれば、今後、同じような説明等を求めても、医師側が誠実な対応をするとは限りませんし、真相は容易に解明されないのではないかとも思われますので、弁護士に相談して、法的手続きも視野に入れた交渉等の依頼をされることも検討されてはいかがでしょうか。

もし、弁護士が依頼を受けた場合は、必要に応じ、診療記録等の開示請求や証拠保全、示談交渉、調停申立て、訴訟提起等を行い、相手方の責任を追及していきます。

その結果、医療行為自体にミスがあり、そのことが原因でお父様の失明に至ったことが明らかになれば、後遺症の賠償も含め相当高額の損害賠償が認められると思われます。

また、仮に、上記の点が明確に証明されなかった場合でも、医師側が事前に十分な説明を尽くしていなかったことが明らかになった場合等には、高額とはいえないまでも、一定の範囲で損害賠償が認められることがあります。

さらに、裁判所等が間に入って和解等が成立する事案では、相手方の意向にもよりますが、相手方から書面や口頭で謝罪を受けることができる場合があります。

私は、ある病院の事務長を務めております。当院では、日々、患者さんのために精一杯の活動をしているつもりですが、ときには患者さん等との間でトラブルが発生することもあります。トラブルの内容としては、医療行為自体のミスが問題とされているものもありますが、医療行為のミスといえるか否かは別として、どうして不幸な事態が生じたのかについて、もっと具体的でわかりやすい説明、詳細かつ丁寧な説明をしてほしい、といったことをおっしゃる患者さんやご家族が相当多くいらっしゃいます。また、担当医が冷たい対応をしたとか、不誠実な態度、高圧的で無責任な態度をとった、というような苦情をいただくこともあります。事務方から医師側へ事情の確認や調査を行うケースもありますが、医師の中には、「私のオペにミスはなかった。」の一点張りで、それ以上の調査に応じない医師や、「患者側の要望に合わせて詳細な説明をし、懸命に治療をしたにも関わらず、残念な結果になったケースで、後に、患者側から、以前の説明等の中から都合の良い部分だけを指摘されて、あたかも医師側に責任があるかのような疑われ方をしたことがある。それ以降、責任追及を受ける危険のあるような話は、自分からは一切しないようにしている。」とか、「患者さんに専門的な話をしても十分に理解してもらえないし、正直、面倒なので、自分から話を遮って、次のステップに進むこともある。」とか、「患者さん側から少しでも批判的な話をされると、後で何か責任をとらされるのではないかと考えてしまう。自分は、患者さんのために精一杯活動しているのに心外である。患者さん側の批判的あるいは懐疑的な言動に対しては、こちらが非を認めたことにならないようにするため、その場で徹底的に反論している。そのような対処をしていると、次第に患者さん側からは文句が出ないようになる。ただ、このようなケースで、後日、突然、訴訟を起こされたことがある。」などと話す医師もいます。今後の当院としての備えとして、以上のような状況をそのままにしていてよいのか悩んでおります。医師をはじめとするスタッフが、日々、患者さんのために一生懸命頑張っていることは私もよく承知しておりますが、今後に向けて良いアドバイスがあれば教えてください。

患者さんや、そのご家族の方々は、ご自身やご家族が怪我をしたり、病気になったりした際、病院等の医療機関を受診するわけですが、はじめから医師や医療機関を疑ったり、批判的な目で見たりしている方はほとんどいません。むしろ、医師や医療機関を信頼しているからこそ受診を希望するのです。また、患者さんご自身や、そのご家族のために、医師や看護師等が一生懸命に治療を行っている姿を見ていますし、感謝もしていると思います。まれに、そうではない人が含まれている場合もあるでしょうが、多くの患者さんは、普通の、善良な市民の方々なのです。

そして、患者さんや、そのご家族が、ご自身やご家族は今どんな病状なのか、いかなる病名の病気なのか、これからどんな治療がなされるのか、どのくらいの期間を要するのか、予後はどのようなものなのか等について、よく知りたい、わかりやすく教えてもらいたいと思うのは、ごく自然な心情です。

医師ないし医療機関の方には、基本的なことですが、以上の点を、はじめによくご認識いただきたいと思います。

たしかに、世の中には、医師や医療機関に対して不当要求をしてくる人もいますし、何らかの理由で医師や医療機関を疑っている、恨んでいる、あるいは悪意を持っているという人もいるでしょうが、そういう人たちは、ごく少数です。しかし、医師や医療機関側が、このごく少数の人たちの意識や考えを、すべての患者さんに共通する意識や考えであると勘違いをしてしまうと、初期対応から間違ってしまい、結果的にトラブルを多く招くことになります。

医師や医療機関の方々に申し上げたいことは、法的トラブルを未然に防ぐ、あるいはトラブルが生じたとしても最小限の被害で解決を図るためには、医療行為そのものを適正かつ充実したものにするよう努めるべきは当然ですが、それと同時に、患者さんやそのご家族を、お客さんという立場でみて、あるいは少なくとも自分達と対等の存在と認めて、事前・事後を問わず、いわゆる上から目線の対応や冷たい対応をせず、常に誠実な態度で、懇切・丁寧に接したり、説明したりする、また、相手の話を途中で否定したり遮ったりせずに最後までよく聞き、そのうえで医師や医療機関側の考えを、相手の疑問や不安等を無理に押え込む形ではなく、きちんと解消するという形で、相手に無理なく聞いてもらえるような話し方や態度で誠実に伝えていく、というスタンスが重要です。

そして、何よりも重要な点ですが、医師や医療機関に謝罪すべき部分があれば、早い段階から素直に誠実に謝罪することをお勧めします。医師や医療関係者の中には、過去にいわゆる医療過誤裁判を経験したり、他の医師等が訴えられた情報を耳にしたり、病院の顧問弁護士等から「医師や病院の側で予め非を認めたり、謝罪したりすると、後に起こされるおそれのある医療過誤裁判等に良い影響を与えないから、安易な謝罪等はしないように。」といったアドバイスを受けたりしていることがあり、これらを極端な形で理解し、必要以上に警戒する態度をとる、あるいは自己の非を一切認めない言動をする、といった方も見受けられます。たしかに、弁護士の中には、医師や医療機関に対し、上記のようなアドバイスをする弁護士はいると思われます。しかし、私どもは、こうしたアドバイスは、相手方が暴力団等の反社会的勢力や常習的なクレーマーなどによる不当要求を念頭に置いたアドバイスであって、相手方が患者さん側である本件のようなケース、つまり、当初は善良な市民として、医師ないし医療機関を信頼して治療を受けに来られる方が大半であるようなケースには妥当しないと考えております。むしろ、このようなケースにおいて、前記のようなアドバイスに従った対応をすると、トラブルが生じやすくなったり、起きてしまったトラブルがこじれてしまったりすることが多くなると考えます。

もっとも、やみくもに謝るという対応は適切ではなく、どの部分のどのような点について謝罪するのかを可能な限り特定して謝罪することが肝要です(もちろん、事前・事後の誠実かつ丁寧な説明とともに。)。

以上のような、私どもがお勧めするスタンスや対応をしていただければ、貴院のトラブルは減少するでしょうし、仮にトラブルが生じたとしても解決が早まるでしょう。

何事も証拠が大事だから、従来からある診療記録等の整備はもちろんのこと、患者さんやご家族等とのやりとりに関する書面もしっかりしたものを準備し、署名・押印等も必ずもらっておけば、トラブルがあっても怖くないし、争いに勝てる、と思われている方がいらっしゃるかもしれません。もちろん、証拠も書面も極めて重要です。しかし、これらを扱う医師や医療機関の意識や対応が正しいものでなければ、一つのトラブルに偶々勝てることはあるかもしれませんが、それ以外のトラブルが頻発するでしょうし、トラブルがこじれて病院等の評判を落とすこともあるでしょう。

繰り返しになりますが、患者さんやご家族の多くは、一生懸命、治療にあたってくれた医師や看護師の方々をきちんと見ていますし、感謝もしています。仮に、説明等を求められたとしても、その際の患者さん側のお気持ちは、医師や医療機関を責め立てるためのものではなく、本当のことを知りたくて、あるいは不安な思いの中で、より丁寧でわかりやすい説明を求めているというのがほとんどのケースであり、たとえ、その瞬間、瞬間には、患者さん側から、声のボリュームが上がった発言がなされたり、感情的な発言がなされたりすることがあるかもしれませんが、そこから逃げずに、先ほどから申し上げているような誠実で懇切・丁寧な対応を続けていけば、最終的には納得される、強い発言をしなくなる、納得までには至らないとしても正確な説明と誠実な謝罪さえ受けられればそれ以上の責任追及等は考えない、というような患者さん方が大多数であると思いますし、万一、争いになったとしても、上記の対応をきちんととっていれば、何ら恥じることなく堂々と訴訟等の場に臨めるでしょう。

しかし、そこから逃げて十分な説明をしない、相手の話を聞かない、相手が少し話し出すと、これを自分の声で覆い被せるように遮り、自分の話ばかりする、自分たちには絶対に非はないとの強硬な態度をとる、相手方の言動や態度を批判するような発言をする、話を強引に打ち切る、といった対応を続けていると、患者さん側も納得できず、引き下がれなくなり、中には弁護士に相談に行くなどして裁判をしてくる方も出てくるでしょう。そして、トラブルは絶えず続いていくでしょう。

貴院におかれましては、以上の点を参考にされ、今後の病院運営の改善等に取り組まれることをお勧めいたします。また、貴院の発展のために真に有益な助言等をしてくれる顧問弁護士等を得ることも重要であると考えます。

強制執行

強制執行には、どのようなものがあるか

金銭の支払を目的とする債権について、相手の財産を押えて債権の満足を図る強制執行、物の引渡や明渡を求める権利について、強制的に引渡や明渡をする強制執行、作為義務・不作為義務について、裁判所の決定を得て債務者の代わりに債権者自ら権利を実現する強制執行(代替執行)、債務を履行しない債務者に対し、債務の履行を確保するために相当と認められる一定の金銭を債務者に支払うべきことを命じ、債務者に心理的な強制を加えて、債務者自身の手により請求権の内容を実現させる間接強制等があります。

権利の存在を明らかにするものとしてどのようなものがあれば強制執行できるか

強制執行は、給付請求権を強制的に実現するための手続ですから、慎重な手続によって権利の存否が判定されたり、当事者の合意が一定の手続によって確認されたものであることがその前提として必要です。強制執行を開始するのに必要な、債権者の給付請求権の存在を公証する文書を債務名義と呼びますが、債務名義は法定されています。よく用いられる代表的なものとしては、例えば、判決、家事審判事件の審判、仮執行宣言付支払督促や、裁判で和解をしたり、請求されている権利を認めた(認諾)りした場合にこれを記載した調書(和解調書、認諾調書)、家事調停において調停が成立した場合の調停調書、民事調停において調停が成立した場合の調停調書、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載された公正証書等があります。ただし、公正証書は、簡便な手続で作成できるため、強制執行することができるのは、金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求に限られています。

金銭執行は、どのように行うのか

金銭執行は、金銭の支払を目的とする請求権について、債務者の財産から強制的に満足を得る強制執行です。債務者が不動産を所有している場合、不動産を差し押さえ、競売して売却代金から債権の満足を得ることができます。また、その不動産が例えば賃貸されている場合等に、その不動産を差し押さえて賃料等を管理人に交付させる方法による強制執行もできます。動産の場合、差し押さえて売却し、売却代金から満足を得ます。債務者が債権を有している場合、当該債権を差し押さえることができます。金銭債権を差し押さえた債権者は、差し押さえた金銭債権を取り立てたり、差し押さえた金銭債権を自己に移すことができます。

動産や債権は、どのような物でも差し押さえられるのか

生活維持・生業維持、プライバシーの保護、信教・教育上の配慮、社会福祉上の考慮、災害防止との調整等の観点から、一定の財産について、差し押さえが禁止されています。例えば、債務者等の生活に欠くことができない衣服や家具等は、これを差押えてしまうと生活できなくなるので、差押えが禁止されています。

また、債権も、給料等は、債務者の生活の維持に必要な債権であることから、その一部について差押えが禁止されています。

ただし、上記の差押え禁止の範囲は、裁判所の決定を得て変更することができる場合があります。

扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行については、どのような特例が定められているか

夫婦は互いに協力扶助しなければならず、婚姻から生ずる費用を分担しなければなりません。一定の範囲の親族は、互いに扶養する義務があります。夫婦が離婚する場合は、子の監護に要する費用(養育費)を定めます。これら、婚姻費用、扶養料、養育費は、確実に支払を受けるべき要請が強いと言えます。

そこで、これらの金銭債権についての強制執行については、特例が定められています。

強制執行は、原則として、履行期の到来していない請求権についてはすることができないものとされています。しかし、扶養義務等に係る金銭債権が、確定期限付定期金債権である場合(毎月何日などと支払期日が定められている場合)に、その一部について支払が遅れた場合は、まだ支払期日になっていない債権についても、債権を差し押さえる方法による強制執行をすることができます。この場合は、差し押さえることができるのは、各請求債権について、その支払の期限が到来した後に弁済期が到来する給料などに限られます。

また、債権を差し押さえる方法による強制執行では、給料などの債権を差し押さえる場合は、一定範囲について差押えが禁止されますが、扶養義務等に係る金銭債権を請求債権として給料などの債権を差し押さえる場合には、差押えの許される範囲が広がります。

学校事故(いじめ・事故など)

子どもがいじめに遭っているのではないかと思うのですが、はっきりしたことが分かりません。今後、どのように対応したらよいでしょうか。

まずは事実を確認することが先決です。不確実な事実に基づいて対応を行うと相手から反論されて、かえって不利な立場に追い込まれる可能性があります。

お子さんと十分に対話して事情を聞くことは勿論ですが、その他にも、友達やその保護者・学校に事情を聞くなどして事実を確認してください。

最初はいじめがあったと言っていても、後で話が変わってしまうこともありますので、会話を録音しておくことも必要となる場合があり得ます。

会話の録音は違法ではありませんが、後でトラブルになることもありますので、可能であれば相手の同意を得てから行う方がよいでしょう。

いじめの証拠として十分かどうか自信が持てないときは、早めに弁護士に相談して意見を聞いて下さい。不十分な証拠で相手の責任を追及する場合、後でかえって不利になることもあるからです。

子どもがいじめに遭っていることが分かり、証拠も確保しました。今後、どうしたらよいですか。

まずは学校に相談して対策を考えることが考えられます。

しかし学校側の対応が十分でないと感じる場合は、早めに弁護士に相談してください。

弁護士が交渉し、あるいは調停やADR(裁判外紛争解決手続)などの手続を利用して加害者側と話し合うことにより、事態を早期に解決できる可能性もあります。話合いによる解決が期待できない場合は、訴訟を提起することも検討する必要が生じます。

なお、子どもへの悪影響が大きい場合は、転校も検討する必要があるでしょう。加害者が悪いのに被害者が転校することには納得できないという感情があると思いますが、後で加害者に損害賠償を請求することで衡平を図ることも可能です。

子どもの友達の親から、子どもが友達をいじめていると抗議されました。どのように対応したらよいでしょうか。

まずはお子さんに事実を確認してください。その上で、相手に謝る必要があると感じたときは、常識の範囲内で早期に謝罪すべきでしょう。

ただし、謝罪しても抗議が続く場合や金銭的な要求などをされた場合は、早めに弁護士に相談してください。一般的に不適切と考えられる場合であっても、法的な責任が発生するかどうかについては、別途慎重に検討する必要があります。

子どもが学校でいじめられた場合、いじめた子どもだけでなく、教師や学校の責任を追及することは可能ですか。

保護者からいじめについての相談を受けていたなど、いじめを予見できたのに、何の対応もしなかったという場合には、いじめた子どもだけでなく、教師や学校にも責任が発生すると考えられます。いじめの場合、加害者側に損害を賠償する十分な財産がない場合もあり、こうした場合には学校に対する責任追及が、被害回復に重要な意味を持ってきます。

学校で授業中に子どもが怪我をした場合、教師や学校に責任を追及できますか。

危険な状況にあったことを知りながら、何の対応もとらずに、お子さんが怪我をしたという場合には、教師や学校に責任が生ずると考えられます。ただし、怪我を予見できるかどうか、また予見したとして、結果を回避できたといえるかどうかについては、お子さんが怪我をした具体的な状況などから慎重に判断する必要があります。

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