弁護士ブログ

~災害問題 ~土砂災害に関する特別の法律と山林所有者の対応

 現在、当事務所は、平成30年7月豪雨(西日本豪雨。以下、単に「平成30年7月豪雨」といいます。)により被害を受けられた方々からの無料法律相談を行っておりますが、連日の報道、特に河川の氾濫や土砂災害の報道に接する度、今般の豪雨災害の被害の大きさに言葉を無くしてしまうとともに、弁護士の自然災害に対する無力さ感じてしまいます。

 まずは、土砂災害により亡くなられた方々に対して哀悼の意を表するとともに、被害を受けられた方々の一日も早い再建や地域の復興を心よりご祈念申し上げます。

 弁護士としてできることは限られておりますが、今回は、皆さまに、土砂災害に関する法律をご紹介させていただき(※1)、その法律との関係で、山林所有者の方々がなし得ることを検討してみたいと思います。

 

1.日本の森林の現状

 日本は、国土面積(約3780万ヘクタール)の約3分の2(約2500万ヘクタール)を森林で覆われており、うち約58パーセント(約1450万ヘクタール)が私有林となっています(※2)。

 

2.私有林に起因する土砂災害

 したがって、山林での土砂災害が発生した場合、一般の方々の所有する山林に起因するものであることが多いといえましょう。そして、その山林の付近に居住している方がいる場合、土砂災害の被害は甚大なものとなってしまいます。
 そのため、「自分の所有する山林は大丈夫だろうか・・・。でも、自分では土砂災害を防ぐ工事なんてできないし、工事ができる業者も分からない。」と心配されるかもしれません。

 では、土砂災害に関する法律はどのようになっているのでしょうか。

 

3.土砂災害に関する特別な法律

 土砂災害に関しては、①急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(以下「急傾斜地崩壊防止法」といいます。)と②土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(以下「土砂災害防止法」といいます。)が制定されています。

 急傾斜地崩壊防止法は、傾斜度が三十度以上ある土地(急傾斜地)の崩壊、つまり土砂災害から国民の生命を保護するためのものです。

 具体的には、急傾斜地のうちの一部を急傾斜地崩壊危険区域に指定し、その区域内の土地の所有者に対して、急傾斜地の崩壊を防止する工事を命じる等します。
 土砂災害防止法も、土砂災害から国民の生命や身体を保護するためのものですが、急傾斜地崩壊防止法とは異なり、土砂災害が発生するおそれのある区域を土砂災害警戒区域に指定し、その区域内での警戒避難体制を整えること等に主眼があります。

 しかし、いずれの法律においても、基本的に、国や地方自治体が、私有林で発生する土砂災害を防止するための工事をすることにはなっていません。

 

4.山林所有者は自前で工事をする必要がある

 そのため、山林所有者の方々は、自前で土砂災害を防止するための工事を行わなければならないことになります。
 しかし、例外的に、急傾斜地崩壊危険区域内の土地の所有者等が工事を行うことが困難であったり、不適当であったりする場合には、都道府県が工事を施行するとされています(急傾斜地崩壊防止法第12条第1項)。

 したがって、急傾斜地崩壊危険区域内の山林所有者の方であれば、自前で土砂災害を防止するための工事を行うことが難しい場合、お住まいの都道府県にご相談をされるのも一つの手ではないかと思われます。
 ただし、この場合、山林所有者の方々は、いわゆる受益者負担として工事の費用を負担することには留意が必要です(急傾斜地崩壊防止法第23条)。

 

終わりに

 今回は、土砂災害に関する「特別」の法律をご紹介してきました。

 そこで、別の機会において、「一般」的な法律である民法において、山林所有者の方々が、土砂災害に関して、どういった場合に、どのような法的責任を負うことになるのかを検討し、どのような対策を講ずることができるのかを検討してみることにしたいと思います。


※1 なお、この記事は、実際の法律の解釈や実務での運用を確約するものではありませんので、事前に、弁護士や公共団体の担当部署にご相談されることをお勧めいたします。
※2 林野庁『平成29年度 森林・林業白書 全文』(平成30年6月1日公表)36頁参照