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~賃貸問題~他人の物を貸し借りする?

【POINT】

① 他人物も貸し借りする(という賃貸借契約を締結する)ことができること
② 他人物を貸し借りしている人たちは他人に対して賃料相当額の賠償等をしなければならない場合があること
③ 借り主は貸し主に対して賃料の支払いを拒絶できる場合があること
④ 借り主は貸し主に対して損害賠償を請求できる場合があること


 近時,とある方が,大阪府が所有する土地を,自身が所有する土地と併せ,駐車場として貸し出していたというニュースが報じられました(※1)。
 駐車場を借りていた方の話によれば,借りていた駐車場が大阪府の土地で(も)あることは知らず,腹立たしさを感じているとのことです。この方の話は,まさに市民の方々の率直な感覚を代弁しているように聞こえます。
そして,この感覚の基には,「なぜ,貸し主の物ではないのに賃料を払わなければならないのか!?」という直感があると思われます。
 そこで,今回は,他人が所有する物(以下「他人物」といいます。)を貸し借りすることの法律問題について考えてみたいと思います。

1 他人物も貸し借りする(という賃貸借契約を締結する)ことができること

 お金を払って物の貸し借りをする約束のことを「賃貸借契約」(※2)といいます。
この賃貸借契約を締結するためには,①貸し主になる者が「ある物」を借り主となる者に使用等させ,これに対し,②借り主となる者が賃料を支払うことを約束することが必要になります。
 ここから分かることは,貸し主は,自身が所有する物でなくとも,つまり他人物であっても貸すことができるということです。なぜなら,上記①のとおり,民法上,「ある物」としか記載されていないからです。
つまり,民法上,他人物であっても賃貸借契約を締結することはできるのです。(※3)
 したがって,他人物の賃貸借契約により,貸し主は他人物を借り主に使用等させる義務を負い,借り主は貸し主に対して賃料を支払う義務を負うことになります。

2 他人物を貸し借りしている人たちは他人に対して賃料相当額の賠償等をしなければならない場合があること

 しかし,他人物の貸し主には,原則として,他人物を利用して利益を上げる正当な権限はありません(※4)。
したがって,他人物の貸し主は,正当な理由なく,真の所有者がその所有物を使用できない状態にして,賃料という利益を得ていることになります。
 そのため,貸し主は,真の所有者に対して,他人物を賃貸することにより得た賃料(に相当する額)の賠償等をしなければならない場合があります(※5) 。
 同様に,他人物の借り主も,真の所有者がその所有物を使用できない一方,他方で他人物を使用したという利益を得ていることから,その利益(に相当する額)を返還しなければならない場合があります。

3 借り主は貸し主に対して賃料の支払いを拒絶できる場合があること

 では,今回の報道のように何も知らなかった借り主は,真の所有者に対して他人物を使用した利益を返還したうえで,貸し主に対しても賃料を支払わなければならないのでしょうか。
 しかし,そのようなことはありません。借り主が,真の所有者から請求を受けて他人物を返還しなければならない場合,借り主は,貸し主に対して賃料の支払いを拒絶することができます(※6)。

4 借り主は貸し主に対して損害賠償を請求できる場合があること

 また,借り主が,真の所有者から請求を受けて他人物を返還しなければならない場合,借り主は,自身に損害が生じている場合,貸し主に対して損害賠償を請求することができます(※7)。
なぜなら,貸し主は,賃貸借契約上,借り主に対して他人物を使用させる義務を負っている(※8)にもかかわらず,この義務を果たすことができなくなっているからです。

終わりに

 今回は,近時の報道を例に,他人物を貸し借りしたときの問題を検討してきました。
今回の検討をとおして,他人物を賃貸することは法律上可能であるけれども,そうした場合,様々な問題が生じることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
 したがって,結論としては,真の所有者の了承なく(又はそれを得られる見込みなく)他人物を賃貸することは避けた方が賢明ということになるでしょう。もし,このような他人物の貸し借りで気になることがあれば,弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。


※1 Yahooニュース【特集】大阪府の土地なのに勝手に有料駐車場 大家を直撃、その「言い分」は?
(2018年11月21日アクセス)
※2 民法第601条
※3 我妻榮他著『我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権―』(2018)株式会社日本評論社1226頁参照
※4 他人物の所有者との間で賃貸借契約を締結している等の事情があれば別論になります。
※5 民法第703条又は民法第709条
※6 民法第559条及び民法第576条
※7 民法第415条
※8 他人物を賃貸した場合,借り主は,真の所有者から了解を得て他人物を借り主に使用さる義務があるということです。