5年前に夫に先立たれ、夫の財産は、すべて私が受け継ぎました。私には子どもが3人(長男・長女・二男)おりますが、最近、それぞれの配偶者もからんで、兄弟仲が悪くなっており、このままだと、私の死後、私の遺産に関して兄弟間で争いが生ずるおそれがあります。自分としては、一緒に暮らしている長男に自宅の土地・建物と預貯金の一部を与え、長女には株を、二男には預貯金の残りを与えようと考えています。しかし、財産の分け方が必ずしも公平ではないので、そのような話を子ども達にすることは容易ではなく、また、今、話すことによって、子ども達から色々と文句を言われるのも嫌です。法定相続分と異なる内容の遺言をすることも可能だと聞いたことがありますが、この点について教えてください。
遺言をすれば、法定相続分(ご質問のケースだと3分の1ずつ。)と異なる割合で財産を取得させることが可能になります(より確実な遺言として、公正証書遺言をお勧めします。その詳細につきましては、Q1をご参照ください。)。
ご質問にある、あなたのご希望どおりの遺言もできますし、極端な例ですが、ある1人の相続人だけに全財産を相続させるという内容の遺言も有効です。
ただし、兄弟姉妹以外の相続人には、被相続人の財産から最低限確保できる遺留分(いりゅうぶん)というものが認められており、ご質問のケースであれば、お子さん方が相続人となるため、あなたの財産の2分の1は遺留分として確保され、それぞれ、その3分の1(法定相続分)に相当する額、つまり、あなたの財産の6分の1の相当する額については、各人とも、あなたの財産について遺留分が認められることになります。
このため、あなたが、前記のような極端な内容の遺言、つまり、ある1人の相続人だけに全財産を相続させるという内容の遺言をした場合は、遺言自体は有効ですが、この遺言に不満のある他の相続人(遺留分権利者)は、法定の期間内であれば、遺留分を保全するために遺留分侵害額請求権(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅうけん)という権利を行使することができます(相続の開始及び遺留分を侵害する遺贈等があったことを知った時から1年以内又は相続開始の時から10年以内の、いずれか早い時期までに行使する必要があります。)。遺留権利者が遺留分侵害額請求権を行使した場合は、結果的に、遺言どおりの分け方にならないというだけでなく、相続人間に無用の争いが生ずることにもなります。
したがいまして、遺言をされる場合は、法定相続分と異なる割合で財産を取得させる内容の遺言をすることは勿論可能ですが、各相続人の遺留分に配慮した内容の遺言をすることが重要となります。