暴力団関係者の要求に応じて会社で面談する場合、こちら側の言動で注意しなければならない点について教えてください。
相手が暴力団関係者ともなれば、何もしなくてもただ居るだけで怖い…というのが現実だと思いますが、その場から逃れたいという気持ちから、相手の一方的な要求に安易に応じたり、約束したりするようでは、企業としての姿勢が疑われます。
相手は、「子供の使いじゃない。」などと凄むでしょうが、ビクついたりせずに、強い信念と気迫を持ちつつ、落ち着いて対応しましょう。早く暴力団員との関係を絶ちたいという気持ちは分かりますが、無理に解決を急いではいけません。彼らは、結果を出したいわけですから、一刻も早く要求を呑ませたいのです。それに便乗して、解決を急ごうとすれば、彼らの思惑どおりになってしまいます。
暴力団員は、巧みに論争を持ち込んで、相手の失言を誘い、また、言葉尻をとらえて厳しく糾弾して要求に従わせようとしますので、相手の言うことに関し、議論をすることを避け、不用意な発言をしないように細心の注意を払い、発言を必要最小限にとどめることが肝要です。
面談当初の段階から「申し訳ありません。」、「すみません」などと、こちら側の非を認めるような発言をしたり、揚げ足を取られるような発言(例えば、会話の流れの中の「責任をもって○○します。」などと発言をすると、後で無関係のことまで「さっき責任を持つと言っただろう。」などと言われることがあります。)をしたり、ミスや落ち度が明確でないのに、こちら側に一方的に非があるような謝罪の発言をしたりするようなことは避けてください(もし、誤った発言をしてしまった場合は、その場において速やかに訂正してください。)。
とくに、相手方の指摘する事実が真実であれば、こちらにも非があるかもしれないが詳細は不明というようなケースの場合、相手方に対し謝罪や金銭賠償等をしなければならないのではないかと不安な気持ちになり、十分な調査をしないまま謝罪をしてしまうことがありますが、調査をしてみなければ指摘された事実やその事実についての責任の所在等が判明しない場合は、安易に謝罪をせずに、調査結果に基づき応対する旨を明確に伝えましょう。
仮に、こちら側にも一定の落ち度があるような場合(相手方の言っている内容自体に一部正当な要求が含まれているような場合)でも、法律上負担すべき義務は、実費弁償等、社会通念上相当な範囲内の損害賠償義務にとどまり、かつ、その義務は、ほぼ例外なく相手方の考えている詫び料等より、はるかに低額なものなのであり、また、正当な内容が含まれる要求であっても、要求手段や方法が社会的に相当な範囲を逸脱している場合には、要求行為自体が強迫罪、強要罪、恐喝罪を構成することがありますので、やはり安易な謝罪や約束は絶対にしないでください。やむを得ず謝罪をする場合も「○○の事実については、お詫び申し上げます。」等、特定の事実に限定して謝罪をしてください。また、謝罪をした際に、相手方から「謝って済むと思うのか。誠意がない。」などと言われた場合、こちら側で既に賠償額を明確に定めているような場合は、その賠償額を支払うことのみを伝えるべきですし、定まっていない場合は「裁判所で認められる法的責任がある場合は、その範囲で対応します。」などと答えるしかありません。さらに、相手方が「誠意がない。」などと言ってきても、こちらから金銭賠償の提案はせずに「裁判所を通して具体的なご請求があれば、こちらも顧問弁護士等と相談して対応いたします。」などと答えてください。 また、その日の面談における相手方の話を聞いただけで要求に応じられない内容であることが明らかなときは(ほとんどの場合、応ずるべきではない。)、明確に拒否してください。不当な要求に対してのあいまいな返事は危険です。 世間の評判や関係者の名誉等を優先して水面下で解決したり、安易な妥協をしたりすると、いわば「良いカモ」とされ、後々まで酷い思いをする結果となるので、例えば、「当社の方針(あるいは業界等の方針でも可)として、そのような要求には一切応じないことになっています。お断りいたします。お引き取りください。」などと言ってキッパリと断り、付け入るすきを与えないことが肝要です。
暴力団の追及に対する回答に窮した揚げ句に、前記のとおり「申し訳ありません。」などと自己の非を認める発言をしたり、「検討します。」、「考えてみます。」などと相手に期待を持たせる発言をしたり、再び訪問される口実となるような言動をすることは厳に謹んでください。